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長崎大・山下俊一教授の『語録』 放射性物質の影響:山下俊一・長崎大教授 On 2011年3月22日外国人記者クラブ http //www.am-forum.net/download/2011.3.22yamasitakyouju.pdf (社)サイエンス・メディア・センター http //www.smc-japan.org 山下 俊一(やました・しゅんいち)教授 長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 附属原爆後障害医療研究施設 教授 世界保健機関(WHO)緊急被曝(ひばく)医療協力研究センター長 日本甲状腺学会理事長 ※現在、福島県知事の要請で、放射線健康リスク管理アドバイザーとして現地の被ばく医療に従事している。 放射性物質の影響:山下俊一・長崎大教授 On 2011年3月22日外国人記者クラブ退避の初動について 放射性物質の影響をチェルノブイリと比較して 現状の環境における発がん率 一般のかたの心配について 今後心配していることとお願い 退避の初動について 最初の1週間、想定外の事象が連続し、情報交換がなかなかうまくいかず、諸対応に遅れが出たことが残念です。国の行った住民避難の方法が通常と違い、事の重大さがまず理解されました。通常は事故サイトから10キロが緊急避難範囲と想定されていました。まず屋内退避の勧告を出し、環境中の放射線量が下がらないときに避難勧告を出します。今回は、20キロ圏内から避難させた後、さらに30キロ圏内で屋内退避の勧告がでました。安全な所まで下がったのであれば、そこでさらに屋内退避というのがおかしいのです。 今回は、次々に原子炉のトラブルが発生し、未曾有の事態です。放射性物質が断続的に出続けています。放出されている放射性物質は複数あり、それぞれ放出量も違います。測定モニタリングを続け、30キロ圏内の屋内退避が間違っていないかも検討していかなくてはなりません。 放射性物質の影響をチェルノブイリと比較して 放射性物質はいたる所に降り注いでいます。一方で、放射性物資はトレーサーと呼ばれるように非常に検出され易い物質であり鋭敏な値を出します。現在検出されている量が即、健康に影響があるわけでないことは明らかです。 チェルノブイリの原発事故をフィリピンのピナツボ火山の噴火と考えると、今回の事故は、普賢岳や新燃岳の噴火に例えられます。どちらも、近くにいると、火山灰や火山流でやけどしたり命の危険がありますが、遠く離れれば被害は減るというところで共通します。違いは、ピナツボ火山の影響は地球上の広範囲に広がったのに対して、普賢岳や新燃岳の噴火の影響が及ぶ範囲は狭いという所です。 福島第一原発から20km離れると、火山の噴出物が灰になるように、放射性物質の影響も弱まります。これまでに放出されている放射性物質は、拡散し薄まり、量がどんどん減っていきます。体についても洗い流せば大丈夫です。微量でも被ばくすれば危ないというのは、間違いです。 現状の環境における発がん率 人体にも通常、放射性カリウムなど1000ベクレル~5000ベクレルの放射性物質があります。またラドン温泉などに行けば、当然ラドンを吸い込みます。これらの放射性物質は量が少なければ(10~500μSv)比較的短い間では問題ありません。 今回ほうれん草や牛乳から規定値を超えるヨウ素131やセシウムが検出されていますが、1回や2回食べても問題ありません。またヨウ素131は半減期が8日と短くすぐに影響が落ちていきます。 1度に100mSv以上の放射線を浴びるとがんになる確率が少し増えますが、これを50mSvまでに抑えれば大丈夫と言われています。原発の作業員の安全被ばく制限が年間に50mSvに抑えてあるのもより安全域を考えてのことです。 放射線を被ばくをして一般の人が恐れるのは将来がんになるかもしれないということです。そこで、もし仮に100人の人が一度に100msvを浴びると、がんになる人が一生涯のうちに一人か二人増えます(日本人の3人に一人はがんで亡くなります)。ですから、現状ではがんになる人が目に見えて増えるというようなことはあり得ません。 一般のかたの心配について 原発から10kmから20kmの圏内にいて避難した人は、放射線量で1mSv程度浴びたかもしれないが、健康に与える影響は、数μSvも100mSvも変わりがない、すなわちがんの増加頻度に差がないのです。 また、1mSvずつ100回すなわち累積として100mSv浴びるのと、一回に100mSv浴びるのでは影響は全く違います。被ばくについて心配しなくてはいけないのは、福島第一原発の中で働いている人たちです。彼らは、被ばくを避けながら決死の覚悟で働いています。彼らの健康をいかに守るかを考えていかなければなりません。一般の人は、まったく心配いりません。 低い放射線被ばく線量の健康に与える影響は証明することができないと言われています。そこから、「証明できないがゼロと言えない」→「わからないから心配」と考えるかもしれませんが、これは間違いです。放射能は目に見えないし匂いもしないから不安ですが、科学の力で数値化することができます。被害を防ぐための一つの手段が「測る」ということです。パニックになってはいけません。社会の一員として理性ある行動をお願いします。 今後心配していることとお願い 放射性物質が広範囲に飛び散っているので、今後食物連鎖を通じて、汚染された食べ物が市場に出るのが困ります。まずは、どの地域でどういう汚染がでているのかモニタリングし、データをきちんと出すことが必要です。それらを照らし合わせて、食べたときの被ばく線量を推定し、1年間に数十mSv~100msvに近づくようであれば、規制が必要になります。 食の安全に厳しい日本では監視体制が強化されると思いますが、逆に規制が風評被害を及ぼさない配慮が必要になります。福島県民が背負った震災、津波、そして原子力災害という三重苦に対して、また東日本を襲った国家存亡の非常事態にすべからく国民がその重荷を分担する覚悟が今こそ必要であり、そのことが古来山紫水明の山島と呼ばれた大和の国の“和”を大切にパニックならず落ち着いて行動する日本の誇るべき文化ではないでしょうか。 【参考】 山下先生が3月21日に福島市で公演された内容が、有志により全文起こしされています(外部リンク): 山下俊一氏・高村昇氏「放射線と私たちの健康との関係」講演 2011年3月21日 山下俊一氏・高村昇氏「放射線と私たちの健康との関係」質疑応答 2011年3月21日 長崎大・山下俊一教授の『語録』
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福島第1原発事故 市町村別、甲状腺検査結果を開示 クローズアップ2013 福島、子供の甲状腺検査 山下俊一・県立医大副学長に聞く 毎日新聞 2013年04月22日 東京朝刊 http //mainichi.jp/opinion/news/20130422ddm003040132000c.html ◇目的含めて見直し必要−−山下俊一・県立医大副学長=県民健康管理調査検討委座長 県民健康管理調査を巡っては、秘密裏に検討委員会の準備会(秘密会)を開いていたことが昨年秋に発覚するなど、透明性の欠如が批判されてきた。検討委座長の山下俊一・県立医大副学長(60)=非常勤、4月から長崎大副学長=に聞いた。 −−1次検査は観察項目を省略し、1人2〜3分で終わる。精度は高いのか。 ◆小さいのう胞や結節も見つけられる意味で精度は高い。スクリーニング(患者を拾い上げる簡易な)検査としては十分だ。 −−2月に座長の辞意を示した理由は。 ◆調査の実施部隊(県立医大)と検討評価(検討委)を同じ人間がやるのはおかしいと感じていた。準備会が報道され、調査の客観性や信用性が問われると思い、代わるべきだと思った。 −−「不安の解消」を目的に掲げる調査は、「被ばくの影響なし」という結論ありきではないかとの批判がある。 ◆誤解を与えたことは申し訳ない。事故直後は不安が強かった。今は段階が変わっている。目的も含めて見直されるべきだ。 福島第1原発事故 市町村別、甲状腺検査結果を開示
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長崎大・山下俊一教授の『語録』 「100ミリ以下は安全」放射線アドバイザー山下俊一氏に苦言殺到 Our Planet TVhttp //www.ourplanet-tv.org/?q=node/1037 (引用開始) 福島県放射線健康リスク管理アドバイザー・山下俊一長崎県大学教授が、就任以降、福島県内のメディアや講演で、「100ミリシーベルトは大丈夫。毎時10 マイクロシーベルト以下なら外で遊んでも大丈夫」と発言してきたことに対し、3日に福島県二本松市で開催された講演会で、住民から次々と厳しい意見が飛ん だ。 また「将来、子どもたちに何か影響があった場合に、責任がもてるか」との質問に対しては、「将来のことは誰も予知できない」とした上で、起こった病気が放射線のせいかどうかを調査するには、福島県民全員による、何十年間もかけた疫学調査が必要と回答した。 (引用終了) 動画 前半講演 http //www.youtube.com/watch?v=7364GahFWKI feature=related 後半質疑応答 http //www.youtube.com/watch?v=ZlypvPRl6AY feature=related 質疑応答(一部抜粋) 質問:先生にも覚悟をもっていただきたい。安全というなら、お孫さんを連れて砂場で遊んで頂きたい。 山下:もし私がそれをしたら信じてくれますか?私は基本的に被ばく二世で、親戚ろうとうみんな原爆で亡くなりました。親たちの代は私たちを連れて、みんな汚染された水を飲み、復興してくれました。広島の方々も一緒だと思います。他にチョイスがない、逃げられない人たちはそこで自分で自分の道を切り開いていったんですね。もちろん、今、住職さんの言われた私への期待は重いほどよくわかります。私がそれに応えて、孫を連れてきて砂場で遊んで、みんなが信じてくれるのだったら、お安い御用だと思います。私は住職さんとのお約束を守りたいと思います。 質問:これまで、福島は安全です。安全ですと言い続けてきたが 将来、子どもたちに何か影響があった場合に、責任がもてますか?イエスかノーでお答えください。 山下:基本的に大切なことは、将来のことは誰も予知できないんですね。神様しかできないんです。彼の質問に答えるには、膨大な数の疫学調査がいるんです。 起こった病気が放射線のせいかどうかを調査するには、福島県民全員の協力が必要となります。 正しい診断をし、正しい経過を把握するには、何十年間も必要なんです。数年、5年、10年ではなかなかその結果はでない。そのレベルの話ですので残念ながら、今の質問にはイエスともノーとも答えられません。 質問:市政だよりなどに、マスクもしなくても大丈夫だと先生の話が書かれていて100ミリ先生の言葉を信じて、戻ってきている人もいる。20ミリが最大だ、その下は自己責任になりますところっと話が変わっている。今までが間違っていたのか、話して欲しい 山下:これがみなさんの混乱の一つの原因だと思います。私は、みなさんの基準を作る人間ではありません。みなさんへ基準を提示したのは国です。私は日本国民の一人として国の指針に従う義務があります。科学者としては、100ミリシーベルト以下では発ガンリスクは証明できないだかた、不安を持って将来を悲観するよりも、今、安心して、安全だと思って活動しなさいととずっと言い続けました。ですから、今でも、100ミリシーベルトの積算線量で、リスクがあるとは思っていません。これは日本の国が決めたことです。私たちは日本国民です。 質問:文部科学省は、先生が100ミリ以下は安全だと言っているということに対し「指導する」と昨日、テレビで言ってましたよね。 山下:私は多分指導されるでしょう。甘んじてそれを受けなくはいけないと考えます。 質問:マスクはしなくていいんですか。先生は気休めだと言っている。 山下:はい、今の状況はまったくそうです。大気中に放射線ヨウ素はもうありません。ほぼ放射線セシウム137です。 衛生上、それをきちんとするということは、子どもたちに注意を喚起する用心するということでは非常に重要だと思います。ですから、私ともう一人の放射線アドバイザー神谷先生は、しっかりとそのことをご説明していると思います。 質問:布団は干しとか、洗濯物を外に干すのは大丈夫か? 幼児に対する日常生活の注意点は? 山下:こうした個別の質問、たくさんあると思います。当初は数字が提示されていませんでしたから、単純に10μSv/h以下になればそんなに心配はないですよ。1μSv/hだったら全く心配ありませんよ。その間は、明確な結論が出せずに、話をしていました。しかし国は20mSvをもって、3.8μSv/hというのを出しましたからやはり測って、それのレベルを遵守するということが重要になります。 私は皆さんとずっとお話して来た当初は、クライシスコミュニケーショんといって危機をいかに未然に防ぐかという話をきてきました。しかし、今日、皆さん方が来てよくわかるように、具体的にどうするか放射線とどう付き合うかということが、皆さんのメインのテーマだと思います。 先ほどの質問で「二本松は危険だから逃げろ」というのがありましたがとんでもない話です。今のレベルは全く心配ありません。その保証を、私の首をかけろというならかけますが、私は子どもたちよりも早く死にます。 もし文科省が私を喚問するのであれば、私はそれに行かなければならないと思います。ただ伝えたい根拠は理論ではありません。現実です。皆さん、現実、ここに住んでいる。ここに住み続けなければなりません。広島、長崎もそうでした。チェルノブイリも550万人もそういう状況で生活しています。そういう中で、明らかな病気は、事故直後のヨウ素による子どもの甲状腺がんのみでした。私はその現実を持って皆様にお話をしています。ですから国の指針が出た段階では国の指針に従うと、国民の義務だと思いますからそのような内容でしかお答えできません。 今の環境庁がもし、年間20mSv以下であれば外に布団を干すということもご自由ですし、何もしても自由です。国がその線引きをしちゃったのです。線引きをした段階でちょっとでも超えると危ない、問題だということに対してじゃあこれをどう考えましょうか。 ということを私は皆さんと一緒に問おています。お母さんのご心配も十二分に分かります。でも、この二本松で、3.8mSv/h以下であれば、そこで干そうが子どもを遊ばせようと問題ないと思います。 質問:私は学校に勤めていて、文科省が出した3.8mSv/hという基準に悩んでいる。もうヨウ素はないと言われているが、土壌の検査の結果では、ヨウ素6200ベクレル、セシウムは16900ベクレルある。飯館はホットスポットだが、それ以外で見ると中通の線量が高いが線量が非常に高かった3月15日頃、みんな知らずに、マスクさえつけなかった。年間20ミリシーベルトという指針が出されているが文科省の累積に3月23日までの線量、内部被ばくも入っていない。 年間20ミリシーベルトになるのではないかと心配だし、その基準にも疑問。山下先生はアドバイスをする立場にいるので県なり、文科省なり、行政に私たちが安心して暮らせるようなアドバイスをしていただきたい。 山下:過去の積算が出されていないというのはまさに仰る通り、3月12日から3月いっぱいのデータも当然公開されると思います。それを踏まえた上で、20mSvについて安全か、安全でないか議論されます。 そして今すぐ何ができるかという問題を提言されました。残念ながら、この福島の中通り地区も、みんな汚染をしました。放射線物質が降り注いだという非常事態にあります。その渦中で、そういう措置をすることがすることが本当に適切か。自分のところだけで済まない、多くの方々の対応をどう統合していくかということを早急に多分、教育委員会や県、国が対応して回答を出すだろうと思いますのでこれはしばらくお待ちいただきたいと思います。 質問:国の基準に従うしかないというお話をされたのですが、先生は、県を通して国に提案する立場にはないでしょうか。 山下:直接国に話をできます。話をしています。 長崎大・山下俊一教授の『語録』
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長崎大・山下俊一教授の『語録』 福島県立医科大学パンフレット 福島県放射線健康リスクアドバイザー山下俊一先生が答える放射線Q A http //www.fmu.ac.jp/univ/shinsai_ver/pdf/faq_230501.pdf 転載ご自由。5月30日採録。 (H23.5.10) 福島県放射線健康リスクアドバイザー山下俊一先生が答える放射線Q A 公立大学法人 福島県立医科大学 監修:長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 附属原爆後障害医療研究施設 教授 福島県放射線健康リスク管理アドバイザー 福島県立医科大学理事長付特命教授 山下 俊一 福島県放射線健康リスクアドバイザー山下俊一先生が答える放射線Q AQ AQ1 Q2 Q3 Q4 Q5 Q6 Q7 Q8 Q9 ニュースウォッチ9(2011.4.1)抜粋 パンフレットへの批判コメントをどうぞ Q A Q A このリーフレットは、チェルノブイリ原発事故の被ばく研究において世界的第一人者の研究者である、福島県放射線健康リスク管理アドバイザー・山下俊一先生の講演会および報道取材にて行われた質疑応答を元に構成したQ A集です。 Q1 【Q1】地域の環境放射線は一時間あたり数マイクロシーベルトとなっていますが、数週間、数ヶ月この環境に住みつづけることで、蓄積した数ミリシーベルトを超えることもあるかと思われます。子どもへの影響やお腹の赤ちゃん、または将来妊娠した場合のリスクはどのくらいなのでしょうか? 【A1】報道されている値はあくまでも屋外での空間線量です。それが屋内では一般的には2~10分の1くらいに減りますので、実際の被ばく線量は少なくなります。もちろん、蓄積されてどうなるか、を心配されるのはごもっともですが、現在の状況が継続すれば健康リスクが出ると言われる年間100ミリシーベルトまで累積される可能性はありません。そして、同じ100という線量でも、1回で100受けるのと、1を100に分けて受けるのとでは、影響が全く違います。少しずつならリスクははるかに少ないのです。 妊娠しているお母さんが特に心配されるのも当然です。ナガサキでは妊娠初期に被ばくした場合、小頭症の例が増えたのは事実ですが、しかし原爆とは被ばく線量が桁違いですので、現在の福島の被ばく量でしたら、なんら心配はいりません。また、チェルノブイリでは、事故当時0~5歳の子どもを中心に甲状腺ガンの発生率は増加しましたが、その時お腹にいた子どもの中での増加の報告はありません。将来の妊娠に対してもまったく心配はいりません。 お子さんに対しても、現在の減少していく線量の環境で影響が出ることはありません。 Q2 【Q2】現在妊娠しています。飲み水も味噌汁にまでもミネラルウォーターを使っています。野菜を洗うのも怖いのですが、どう対応すべきでしょうか? 【A2】基準値異常の放射性ヨウ素が検出された水は飲まない、飲ませない、というのは賢明な選択でしょう。ただし、それでも。数回飲んでしまったからといって心配する必要は、今の放射線レベルならまったくありません。また、ミネラルウォーターがないから、水を飲ませない、ミルクをあげられないというのは、逆に乳幼児の健康によくありません。また、野菜を洗ったり、顔を洗ったり、お風呂に入ったり、と生活用水に使うのはなんら心配いりません。 Q3 【Q3】小学生の子供がいます。外で遊ばせても大丈夫なのでしょうか? 4月から学校が始まるのですが、普通に通学させるのも心配です。洗濯物も外で干していいのでしょうか? 家には24時間換気システムがついているのですが、切ったほうがいいのでしょうか? 【A3】1時間当たりの環境線量が10マイクロシーベルト(その後3.8マイクロシーベルト)以下であれば、もう外で遊ばせて大丈夫ですよ。 もちろん普段どおりの通学も問題ありません。ただし、指についた土をよく洗わせたり、着ていた上着のホコリを払わせたりしたほうがよいかもしれません。 洗濯物についても、取り込むときに少し丁寧にホコロを払う程度で問題ありません。布団干しも同様に大丈夫です。換気についてもシステムを切ったりナーバスになる必要はありません。 Q4 【Q4】万が一これからまた環境線量のレベルが上がってきたら、どのくらいで気をつけるべきでしょうか? また、どのくらいで退避するべきでしょうか? 【A4】国の指標では、放射性物質の放出による被ばく線量の累積値が、外部被ばくで10~50ミリシーベルト、内部被ばくで100~500ミリシーベルトになる可能性がある場合に、国が屋内退避又は退避を指示することとされています。 このため、一時的な環境放射線量で判断することはできませんが、国や研が公表している放射線量のデータの推移に注意するとともに、屋内退避や避難については、国、県、市町村の支持に従って行動してください。 Q5 【Q5】20Km圏内の避難指示の地域から避難しています。まさかこれほど長期の避難生活になるとは思っていなかったので、身の回りの物しか持ってきていません。家の中の物を取りに帰ってもいいのでしょうか? 何時間くらいであれば。20Km圏内にいても健康への問題がないのでしょうか? 【A5】20Km圏内は、避難指示が出ていますので、国から許可があるまでは絶対に入らないで下さい。 Q6 【Q6】テレビでは、被ばくを防ぐために、マスクをする、手を洗う、帰宅したら衣服をビニール袋に入れる、などという防護策が語られていて、過敏になっています。被ばくを防ぐために手を洗う、マスクをする、衣服をビニール袋に入れる、雨に濡れない方がよい、濡れた傘も洗う方がよい、など言われていますが、外出する際はどの程度の防護策を講じたらよいのでしょうか? 【A6】マスクには、放射性物質を防ぐ効果は実はあまりありません。外出した際の上着は、家に入るときに軽くホコリを払う程度でよいでしょう。ビニール袋に詰めてしまう必要はありません。雨も、多少濡れた程度では全く問題ありませんが、念のために傘をさすほうが、心理的に安心が得られるでしょう。傘も玄関先に立てかけておいて問題はありません。手を洗ったり、髪を洗ったりするのも、帰宅直後に直ぐにしないといけないという訳ではありません。 Q7 【Q7】飲料水について、浄水器で放射性物質がきれいに除去できるのでしょうか?沸騰させるとよいとも聞きますがどうでしょうか? 【A7】まずセシウムについては、浄水場で濾過(ろか)される際に吸着されるので、水道水には出てきません。ヨウ素については、水道水にでてきてしまいます。浄水器では残念ながら濾過されないと思われます。また、ヨウ素の沸点は高いので、沸騰させてもあまり蒸発はしないでしょう。 Q8 【Q8】被ばくは移るのですか? 【A8】被ばく自体は移りません。放射性物質をチリのようなものだと考え、それをきちんと衣類などから払い落とせば、移ることはありません。 Q9 【Q9】「ただちに健康には影響はない」という言い方をよく聞きますが、「ただちに」をどう理解したらよいのでしょうか? 【A9】基準値は、そのレベルの放射線量の食品(または水)を1年間食べたら影響が出る可能性があるので、摂取しないほうがよいでしょう、という目安です。ですので、この場合の「ただちに影響はない」は、数回または1週間などの短期間、基準値を多少超えた食品を食べたとしても影響はありません、ということを意味しています。 ニュースウォッチ9(2011.4.1)抜粋 ============================================ NHK(ニュースウォッチ9)(23.04.01) 「原発周辺 現地の碑銘 現地に入る医師」中継 飯舘村訪問時のインタビューより(抜粋) ============================================ (ナンバーリングは引用者による) (1)きょう飯舘村に入って、多くの人と言葉を交わしているが、どのような印象をもったか? ▲農家では、外で働く時間が長く、特に不安が大きい。高い放射性物質を検出した土への不安も重なる。健康への影響は大丈夫と考えるが、土については、さらに多くのデータが必要。 (2)健康への不安を訴える人も多いが、専門家として、どう伝えているのか。 ▲現時点で、健康に影響を与える年間100ミリシーベルトという被ばく線量にまったく達していない。不安を感じるのは理解できるが、正しく恐がって。 (3)放射線は目に見えないだけに、住民の人達は不安を感じているようだが、どういったことを伝えていくべきか。 ▲現時点で放射線の影響はほとんどない、ということを伝えている。政府などが正しい情報を出し、メディアが正しく伝え、市民が正しい行動をする、という3つのどれもが欠けてはいけない。パニック状態を鎮めるために、正確に伝えることに注力している。 (4)山下さんは、チェルノブイリ原発事故のあと、周辺に住む人たちへの診療を続けている。今回の事故が起きてから、チュエルノブイリ事故は、しばしば比較として出されているが、違いはどういった点か。 ▲チェルノブイリは、炉心がさらけ出されて、大量に放射性物質が放出された。今回は、圧力容器の中にあり、異なる。 一方で、放射線の人体に与える影響はチェルノブイリのような事故を教訓に国際機関や、各国の様々な研究機関がデータを蓄積してきた。実際の被ばくの例は少ないので、貴重なデータになる。 (5)それでは、今回はまず、どういったことを見ていけばいいのか。 ▲子どもの甲状腺のがん。放射性ヨウ素は、子どもに必要な甲状腺ホルモンを作る材料として取り込まれ、成長期の子どもに大きく影響する。 実際に、チェルノブイリでは15歳未満で事故後20年間で、およそ5000件発生した。 しかし、当時は全く摂取制限もなかったが、日本の場合、基準値を超えるものは出回らない点で大きく異なる。 実際、子どもの放射線量の調査を福島県内で行っているが、非常に低い値が出ている。したがって、大きな心配はない。 (6)「ただちに健康に影響が無い」という言葉を、多く聞いてきたが、その根拠となるものはあるのか。 ▲一つはデータ。チェルノブイリ事故後の放射性セシウムの放出された量。非常に広範囲に拡がった。しかし、放射性セシウム137は体内に入ると筋肉に入るが、筋肉のがんは一例も出ていない。今回の福島第一原発の事故でも放射性セシウムが放出されたが、今回の量では問題ないと考えられる。 (7)山下さんは、福島県にリスク管理のアドバイスをする立場だが、どういった提言をしているのか。 ▲まもなく学校がはじまるが、校庭で子どもたちが遊んでいいか。しっかりとグラウンドの土のデータを集める必要があると伝えている。 (8)今後、わたしたちは、どのような点に注意していけばよいのか。 ▲福島県では、地元で頑張ろうという人たちが多い。そうした人たちを支えていくために、いたずらに風評に左右されることなく、放射線への正しい判断をして、福島県を支援していかなければいけない。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 発行:公立大学法人福島県立医科大学 災害対策本部 (2011.05 発行) 〒960-1295 福島県福島市光が丘1番地 TEL 024-547-1111(代)/FAX 024-547-1995 http //www.fmu.ac.jp ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ パンフレットへの批判コメントをどうぞ 名前 コメント すべてのコメントを見る 長崎大・山下俊一教授の『語録』
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2011年9月3日 「朝日がん大賞に山下俊一氏を選んだ朝日新聞社に抗議します」 子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク 代表世話人 中手聖一 世話人一同 貴社の9月1日付けの新聞を見て、わたし達「子どもたちを放射能から守る福島ネッ トワーク」の一同、また、一緒になって、福島の子どもたちを守る市民運動に参 加している関係者は愕然とし、同時に怒りを抑えることができませんでした。 なぜ、山下俊一氏の行っている行為がこのような形で評価されるのか、理解に苦 しみます。氏の発言が、子どもたちを守ろうとしている福島の親たちをどれだけ 苦しめてきたのか、またこれからも福島医大の副学長として福島県民を苦しめる つもりなのか、貴社の選考の基準には入っていなかったのでしょうか。 山下俊一氏は、3月の下旬から福島県に入り、「年間100ミリシーベルトでも問 題ない。妊婦でも子どもでも危険はない」という発言をくりかえしてきました。 当時の同氏のこの発言は、福島市政だよりにも掲載され(別添1)、福島県内で 「安全神話」を築き上げてきました。 同氏は医学系の雑誌には、低線量被ばくのリスクを指摘する記事を書きながらも、 福島では逆に低線量被ばくのリスクをまったく否定する言動をとったのです。 ご存知のように、低線量放射線の影響は「閾値なしの線形モデル」を採用し、線 量に応じた影響が生じるというのが、国際的な常識となっており、保守的なICRP もそれを認めています。 実際には、福島では、多くの地域では、本来であれば、一般人の出入りが禁じら れる放射線管理区域以上の高い汚染が広がり、チェルノブイリ事故と比較しても 安心・安全とはいえないレベルの状況が続いています。同氏の発言は、多くの方 の避難を躊躇させ、また、福島に住み続けることについて安心感を得させ、家族 不和まで生んでいるのです。さらに、「危険かもしれない」という市民が憂慮の 声をあげられない空気をつくりだしました。 この世に家族ほど大切なものがあるでしょうか。子どもほど大切な存在があるで しょうか。それなのに、同氏がつくりだした「安全神話」により、家族を守れず に、私たちがどれほど苦しんだか、言葉には言い尽くせないほどです。わたし達 福島県民は、それでもなんとか明るく前向きに生きようと日々戦っているのです。 私たちは、このように山下俊一氏が、県の放射線リスク・アドバイザー、県民健 康管理調査委員会の座長にあることに強い危機感を覚え、同氏の罷免を求める署 名運動を行い、6607筆の署名を得ました(別添2)。また、全国の署名運動では、 1ミリシーベルト順守と避難・疎開と併せて同氏の罷免を求める要請項目を加え ましたが、4万筆以上の署名が集まりました。 このような市民運動は一切報道せず、山下俊一氏のようない人を「がん大賞」を 授与するとは、御社の新聞社としての良識が疑われます。 わたし達は山下氏への「がん大賞」授与の撤回を求めるとともに、貴社紙面にお いて謝罪を掲載することを求めます。 あわせて、このような批判があったことを、きちんと報道していただくことを求 めます。 以上 別添1:福島市政だより(4月21日号) http //dl.dropbox.com/u/23151586/Experts_Fukushima_Newsletter.pdf 別添2:山下俊一氏の罷免を求める県民署名 http //dl.dropbox.com/u/23151586/kenmin_shomei.pdf
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長崎大・山下俊一教授の『語録』 m3.comインタビュー 6/14実施 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く 山下俊一氏は、医事従事者会員限定サイトm3,comのインタビューを受けています。 http //www.m3.com/iryoIshin/article/138471/ http //kodomo-kenkou.com/ などから拾ってみました。 おいおいに、また順不同に私なりの批判点を書き込んで参るつもりです。ときどきここを覗いてみてください。読者の皆さんからの批判点指摘ボックスも設けました。 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く◆Vol.1 「福島は心配ない」と言える理由はある~水素爆発直後でも個人線量は1週間で約20μSv ◆Vol.2 多様な発がんリスクをどう捉えるか~政府の情報開示のあり方には問題あり ◆Vol.3 最初から火中の栗を拾う覚悟だった~“情報災害”の渦中の福島県民を救うのが目的 ◆Vol.4 福島県民の健康管理はオールジャパンで~広島、長崎の知恵生かす、最終責任には国にあり ◆Vol.5 正しいことを言えば通じると考えていた~リスク・コミュニケーションの仕方は反省 (付録)学会情報例シンポジウム3「放射線被曝うけた小児の検診のあり方について」 第63回北日本小児科学会 ◆Vol.1 「福島は心配ない」と言える理由はある~水素爆発直後でも個人線量は1週間で約20μSv Textソース:http //kodomo-kenkou.com/shinsai/info/show/985 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く◆Vol.1 http //www.m3.com/iryoIshin/article/138471/ 2011年6月29日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) 島県放射線健康リスク管理アドバイザーとして、福島第一原発事故直後から、放射線による健康被害の影響に関する啓発、相談活動に取り組んできたのが、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏。 様々なエビデンスや福島の放射線量などを踏まえ、「安心」を説く山下氏の言動に対しては批判もあるが、「誰も動かなかった。だから、火中の栗を拾う覚悟で福島に行った」と山下氏は言う。放射線の被曝リスクの考え方やこの3カ月間の活動のほか、今後の福島県民の健康管理のあり方などについてお聞きした(2011年6月14日にインタビュー。計5回の連載)。 山下俊一氏は、「今の放射線防御の基準は、広島、長崎のデータが基準になっている」とし、疫学調査の重要性を説く。 ――まず低線量の放射線被曝による健康への影響について、現在分かっていること、科学的なエビデンスをお教えください。 人類が放射線の存在を知ったのは、わずか100年くらい前のことです。1895年にレントゲンがX 線を発見、翌年にベクレルが放射線を見つけた。放射線が発見されてからは、「これは便利なものだ」と、様々な場面で使われるようになった。例えば、いぼ、たこなどの治療にも使われた。 その結果、すぐには症状が出なかったのですが、放射線を当てた場所に後からがんが生じてきた。キューリー夫人も白血病で亡くなっています。しかし、最初は皆、放射線の危険性が分からなかった。 戦後、広島、長崎における約12万人の健康影響調査(編集部注:放射線影響研究所が1950年以降、実施している疫学調査)の結果、1回に外から浴びた放射線量が100mSvを超えると、発がんのリスクが高まることが明らかになってきた。まず白血病が被爆の5~7年後をピークに増えたのですが、その後は減少した。放射線の怖さが減ると思った頃、10年後から少しずつ他のがんが増えてきたわけです。 広島、長崎以外にも、データが結構あります。例えば、イスラエルでは建国時、様々な国から戻ってきた人に、ダニや白癬菌などを殺すために放射線を使った。その時に被曝した子供たちをフォローアップしています。そのほか、医療被曝、つまり放射線で治療をした子供たちなどに関するデータもあります。これらを全部集めてでき上がったのが、今の放射線の安全防御の基準です。 ICRP(国際放射線防御委員会)の勧告で示されているのが、「いかなる場合も100mSvを超さない」という基準。UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)が、毎年会議を開き、様々なデータを検討している。それを基に、IAEA(国際原子力機関)やWHO(世界保健機関)などが放射線に関する健康管理のリスクの基準として使っているわけです。 このように放射線の安全防御については100年近く議論されており、特に戦後、データが蓄積されてきた。ただし、これらは基本的には1回の外部被曝の影響です。それに対し、チェルノブイリは内部被曝。環境汚染の中で放射線被曝をした結果、どんな健康影響が出るかがこの25年間議論されてきたわけです。 明らかになった一つが、放射性ヨウ素による内部被曝で、子供の甲状腺がんが増えること。その被曝レベルが議論になったわけですが、線量は実測ではなく、後から計算で出すことになる。しかし、100mSvなのか、50mSvか、あるいは 1000mSvなのかが分からない。誤差がものすごく大きい。それでも、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、米国、ヨーロッパ、日本が協力して、いろいろな計算式で国際基準を作り、「100mSvを超すと明らかにリスクが高まる」ことが分かってきたのです。 ――内部被曝も100mSvが基準になる。 たまたま外部被曝も内部被曝も、基準が一緒だった。どちらも100mSvを超えると発がんリスクが高まる。ただ、子供については、やはりそれよりも厳しい基準にする、50mSvを超さないようにすることが現在議論されています。ただ今は、100mSvで線引きされています。 つまり、100mSvの根拠は、非常に明確なのです。世界中の研究者が何百人も集まって、何千という論文を検証して基準が作成されている。これを上回るデータはなく、その根幹を成すのは、広島、長崎の疫学調査です。 ――「外部被曝で100mSv」という基準が作られたのはいつ頃でしょうか。 ICRPでも、UNSCEAR も、1970年代、80年代ごろから出ています。原発で働く人は1970年代、80年代が恐らく一番多かったと思うのですが、ILO(国際労働機関)による、「年間50mSvを超えない、5年間で100mSvを超えない」という基準が世界で遵守された。 ――広島、長崎は一度の放射線被爆とのことですが、瓦礫などに放射線が蓄積され、それにより、低線量で長期に被爆することは想定されていないのでしょうか。 ありますが、その量は外部被爆に比べると、微々たるものです。ケタが違う。だから、ほとんど無視できるくらいになる。また世界的に見れば、ハイバックグラウンドのエリアは幾つもあります。飛行機のパイロットやスチュワーデスも、年間数mSvを浴びています。そういう方々の長期の影響を見ても、発がんリスクの上昇は見られません。放射線による影響は、閾値がない直線モデルで考えられていますが、100mSv以下のレベルはあくまでもグレーゾーンなのです。 ――科学者ではなく、一般の方にこのグレーゾン、つまり「分からない」ことを、先生は健康リスク管理アドバイザーとしてどのように説明されるのでしょうか。分からないことをそのまま「分からない」と表現すると、一般の方は不安に思う懸念もあります。 私が最初に福島に行った3月18日には、ほとんど何も情報がなかった。だからまず100mSvを超えないという自信がないと、「心配は要らない」とは言えないわけです。そこで計算したら、どんなに多く見積もっても、(年間積算線量は)100mSvにならなかった。3月15日から、うちの若いスタッフが福島で活動を開始しています。水素爆発が起きた直後の一番高い時です。その時にガイガーカウンターで測定した空間線量は20μSv/hくらいだった。 ――それはどこで測定したのですか。 福島市です。高いところでは25μSv/hありました。しかし、彼らは個人線量計を約1週間つけていましたが、個人線量計の値と、空間線量による年間積算線量の予測値には10倍以上のギャップがありました。今、小学校でフィルムバッチをつけて測定する動きがありますが、空間線量からは年間数mSVになるかもしれませんが、実際測ってみればすごく低い値になるでしょう。 ――ずっと戸外にいるわけではないからでしょうか。 はい。生活パターンから考えると、裸で24時間、戸外にいるわけではありません。文部科学省は、「学校の校庭等の年間放射線量は20mSv、空間線量率3.8μSv/hを超えない」という基準を出しましたが、これは外には8時間いるという前提。実際にはそれほど長くいないでしょうし、今の空間線量はそれほど高くはありません。 ――1週間福島にいたスタッフの個人線量計の線量はどのくらいだったのでしょうか。 1日3~4μSv、1週間で20μSvぐらいです。一番高い時で。1960年代、70年代の東西冷戦時代、核実験が行われていた時代は、日本国民はこれよりもケタが違う線量の放射線を浴びていました。 ――米国や旧ソ連などの核実験により、日本の空間線量は高かった。 そうです。しかし、その結果、がんが増えたという証拠はありません。米国では、ネバダでの実験の状況をオープンにしているため、どのくらい被曝したかが分かります。その量から考えても、今の福島の被曝量は、騒ぐほどでないことは明確です。 ◆Vol.2 多様な発がんリスクをどう捉えるか~政府の情報開示のあり方には問題あり Textソース:http //kodomo-kenkou.com/shinsai/info/show/986 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く◆Vol.2 http //www.m3.com/iryoIshin/article/138472/ 2011年7月1日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) 情報の不確かさが、住民の不安を招く要因になっていると山下俊一氏は指摘する。 ――放射線による健康影響については、一般の方に理解されていない、知られていない事実が多い そうですね。例えば、ここに10μSv/hの放射線を出す物質があるとします。それがどのくらい体に影響があるかを計算し、イメージで示すと、「一つの細胞に放射線がちょっと触るぐらい」。しかし、そのイメージを持てず、放射線が体を突き抜け、細胞に傷がたくさん付くと思う人が多い。専門家が分かりやすい絵を描いて、説明していかなければいけないと思うのです。 また医師も、無頓着、無防備で、放射線を使ってきたという一面もあります。リスクよりもベネフィットが多いから。つまり、医療においては、放射線を使う理由が正当化されていたわけです。 これに対し、今回、問題になっているのは、全くの被害者だから。全く便益がない。原発事故が収束して、放射線のレベルが下がることが最低限必要。したがって、今のこの状況下で皆が不安、心配に思うのは当然。では、何を心配しているか。一度に大量の被曝をするわけではない。低線量の被曝が続くことにより、将来、発がんのリスクが高まるかどうかが心配なのです。 今、日本人の2人に1人はがんに罹患する時代。1000人いれば、500人はがんになる。仮に100mSvの放射線を浴びたら、4、5人程度増える。これが今、心配されている放射線のリスクなのです。ほとんどの人は、ウイルスとか生活習慣病、タバコ、遺伝的な要因など、他の原因でがんになる。これらのリスクを総合的にどう考えるかが、一つの問いになるわけです。このようなリスク論は、論理的に考えないといけないのですが、やはり感情的な側面もあり、心配、不安はなかなか払拭しない。 本当は、まず男性が理解しないといけない。男性は40歳以上になると、広島、長崎のデータでは、被曝による発がんリスクはない。20歳以上でも、男性の場合はほとんどリスクが見られない。そのリスクがない男性が、「危ない」と騒いでいる。 私の説明の仕方も悪いのですが、女性にご理解いただくのが第一なのです。しかし、理解できない以上は、そこにいるだけでストレスなので、自主避難しかない。どう理解して、そこで生活するか。「リスクがゼロのところから、少し増えた。でも医学的にどう考えても影響がないレベルです」などと言っても、「リスクがある」ということだけで、不安になる。 こうした問題は、放射線に限らないと思います。環境ホルモンでもそうです。極めて微量なものでも心配する。電子レンジのマイクロ波による発がんも心配する。タバコもそう。つまり我々の周りには、発がんのリスクになるものが山ほどあるわけです。その中で、放射線だけを取り除くのは、不可能。さらに言えば、私たちの体は、寄生虫と共存しているわけです。体内の大腸菌などもゼロにできない。しかし、我々は免疫力などがあるために共存できる。 同じような体のメカニズムが、放射線に対してもあるわけです。DNAの損傷を修復する能力はすごい。細胞が分裂する時に起きるエラーを修復する能力を持っている。それと同じことを放射線による損傷に対してもしている。しかし、こうした感覚、知識は、急に降って沸いたリスクの状況下ではなかなか理解できない。 ――先生は3月18日から福島に行かれています。最初の頃は、先生が持つ知識を一般の人に伝えるために、どんな工夫をされたのでしょうか。この3カ月間で、説明の仕方などに変化はあるのでしょうか。 最初は、何も分からない状況だったので、火山や紫外線などに例えて説明していました。「放射線は火山のマグマ。ボンと爆発した。近くに行くと火傷するけれども、遠くにいれば、届かない」、「心配なのは、放射線の降下物。火山が爆発する際、遠くにいれば、火の粉は灰になっている。灰であれば心配要らない」という感じです。すると皆が安心する。放射線の単位も分からない中で、細かい話はできません。 でもそれは3月の終わりぐらいまでです。大きく変わったのは、文部科学省が「20mSv」を出した時(編集部注:4月19日に文科省は、「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」を公表)。 ――それまでは、「100mSv以下であれば安心」などとは言っていなかったのでしょうか。 「分からないから、心配しても仕方がない」、「100mSv以下は分かりません」などとずっと言ってきた。 ――「分かりません」というのは。 発がんのリスクは増えない。だから安心してくださいという意味です。「ここで、すぐに大量被曝するわけではないから、大丈夫です」、「逃げ出す心配は要りません」という話をずっとしてきました。 ―そこで文科省の「20mSv」の基準が出た。 ICRPでは、緊急時には20mSvから100mSvの範囲内で防護対策を取るよう勧告しています。その一番低いところを基準にした。当然、国の言うことに従わないといけないから、その基準を守りましょう、という話をしたわけです。 そうしたら、この20mSvは、緊急事故が収束した後の基準である「1mSvから20mSv」の20mSvという話も出てきた。原子力安全委員会と、文科省で、20mSvの根拠がふらついていた。私は現場にいたので、そうした話は全然分からなかった。 ――どこで線を引くかは、最終的には政治や行政がどう判断するかになる。 もちろんです。私としては、20mSvは妥当だと思います。これを超えないよう、また当然低いレベルを目指すということで、国がきちんと対応している、と私は信じているのですが。 それを市民がなかなか信じないのは、また別の要素があると思います。情報の不確かさ、遅さが問題。しかも、悪い情報が、後から出てくる。私も現場にいて、「なんだ、これは」と思うくらい、後から後から情報が出るわけでしょう。 ◆Vol.3 最初から火中の栗を拾う覚悟だった~“情報災害”の渦中の福島県民を救うのが目的 Textソース:http //kodomo-kenkou.com/shinsai/info/show/987 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く◆Vol.3 http //www.m3.com/iryoIshin/article/138472/ 2011年7月5日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) 住民への説明の仕方は、最初はクライシス・コミュニケーションだったが、その後、リスク・コミュニケーションに変わったという。 ――先生のお立場から見ても、政府や東京電力の情報の出し方は遅いなど、問題があるとお考えだった。 我々も情報をテレビで初めて知るぐらいでした。私が官邸に初めて呼ばれたのは、4月6日のことです。それまではもう現場一筋でした。 ――4月6日に官邸に呼ばれたのは、どんな理由からでしょうか。 原子力安全委員会には、40人を超す専門委員がいます。しかし、今回は官邸の一つの方針だと思うのですが、首相の直轄の形で、新たに専門家チームが作られました。その一つのチームの専門委員として呼ばれました。私は既に福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーでしたから、お断りしたのですが、強い依頼があり、お引き受けしました。 官邸で、他の専門委員の意見を聞いても、私と同じ意見でした。しかし、私の場合は、官邸で話をするだけでなく、それを住民に伝えなければいけません。最初は危機管理、クライシス・コミュニケーションの立場からお話していたのですが、4月に文科省から「数字」が出た以降は、リスク・コミュニケーションに変わりました。 ――クライシス・コミュニケーションとリスク・コミュニケーションの一番の違い、また先生が説明の際に心がけたことは何でしょうか。 クライシス・コミュニケーションの基本は、白黒はっきりしたことを言うこと。危ないか、危なくないか。皆をパニックにしないことが重要だからです。しかし、リスク・コミュニケーションの場合は、分からないところ、グレーゾーンの議論が出てきます。 ――グレーソーンの議論では、最終的に情報をどう解釈して行動するかは住民の判断になる。 その点は極めて重要ですが、その前にメディアがどう報道するかが重要。メディアが意図的に操作したり、一つの流れを作ったり……。週刊誌的な扱いをすると県民はますます不安に陥ります。 ――それは具体的にはどんな報道でしょうか。危険性をあおるような報道があるということでしょうか。 「ここは危ない、避難だ」と。平常時の放射線量を超えているから、「危ない」とする。これは絶対に言ってはいけない発言です。福島は、平常時ではないのです。まずこれをご理解いただきたい。福島県民に話をする時に、「皆さん、覚悟してください」とお話するのは、そのような意味です。決して、「危ないから、覚悟しなさい」という意味ではなく、「福島で生きる」ことは、基準が変わることなのです。 なぜ基準が変わるのか。平常時は、放射性物質を隔離し、封じ込めている。だから一般住民は被曝しないで済む。しかし、封じ込めに失敗した今は、環境が汚染された中でどう安全を担保するのか、という話なのです。しかし、少しずつ放射線を浴びても100mSvになることは、原発作業員は別ですが、普通の一般住民ではあり得ない。だから、パニックになったり、放射線の問題をずっと抱えていくことは、やはり不幸なことだと思います。 しかし、そのようには考えず、「あなたの子供に、どんな放射線の影響が出るかは分からない」とあおるのは、罪でしょう。しかも、医師ではない人が健康影響について発言している。我々は、原子力のことは全く分かりませんから、発言できません。しかし、病気のこと、放射線の影響のことは知っている。我々の言葉を信じずに、こうした人たちの言葉を信じるのはどうかと思います。 今は数字が一人歩きしています。出された数字に対するきちんとした説明が必要。これはやはり下手でしたね。 「20mSv」、「3.8μSv/h」という数字がポンと出ると、皆は「この基準は何か」、「これ以上は危ないのではないか」と思ってしまう。でも、放射線の安全防御基準は、「閾値なし」という考え方。「できるだけ低くしよう」というのは、正しい。しかし、「20mSv」を超えたからといって危険なわけではない。リスクをしっかりと認知するように働きかける必要があります。 ――「説明の仕方が下手」という話がありましたが、これが文科省の説明という意味でしょうか。 先ほども言いましたが、文科省と原子力安全委員会の意見に齟齬があり、私自身も驚きました。そんな状況では困ります。情報は常に一元化し、正しいことをぶれないで言い続けることが必要。さもなければ、住民は、“情報災害”の渦中に置かれ、住民は右に左に振れてしまう。 では、誰が舵取りをするか。最も信頼できる情報を出せるのは、政府機関なのです。日本の国民としては政府に信頼を置かなければいけません。国民と政府の信頼が最低条件です。 ――しかし、政府はきちんとした説明をしていない。 はい、だから我々が現場で説明しているのです。 先ほども言いましたが、最初は、白黒を明確にしなければいけない。これは危機管理の原則です。それをしなかった、できなかった、誰も。理由は簡単です。現地の災害対策拠点が崩壊して、最初の1週間、ほとんど何も情報がなかった。福島県は、「原発安全神話」の中で生きていたので、何かあった時にまず国に聞く。しかし、国に聞いてもタイムラグがあったり、別のところから情報が出てきたりして、現場は混乱の極み。そうした中で、誰も火中の栗を拾おうとはしなかった。 結局、誰も動かなかったので、私が福島に行ったわけです。最初は3月20日、いわき市を訪問しましたが、体育館で罵倒されながら話した。翌21日の福島市の会場にも何千人も集まりましたが、同じような状況だった。でも私は、皆の不安や不信がよく分かった。本来なら東電や政府が言うことを、私が話しているわけでしょう。誰かに不安や不信をぶつけたい、投げかけたいという思いだったのでしょう。全く不条理な被災をしたわけですから。まさに被害者。 だから我々は聞くしかない。でも我々が聞いても、皆の不安は解消されない。安心を期待しているわけだから。後で非難されることを覚悟しながらも、「心配は要らない」と言わなければいけない。その覚悟を現場で誰かが持っているかと見たら、誰もいなかった。私は福島に行く前に、(長崎大学の)学長に、「福島に行くということは、バッシングを受けることですが、いいですか」と聞いています。 ――最初から、非難を受けることを覚悟されていた。 はい。 ◆Vol.4 福島県民の健康管理はオールジャパンで~広島、長崎の知恵生かす、最終責任には国にあり Textソース:http //docg.blog135.fc2.com/blog-entry-1286.html 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く◆Vol.4 http //www.m3.com/iryoIshin/article/138472/ 2011年7月 日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) ――今はリスク・コミュニケーションの時期であり、それが今後も続く。 最初は、「ワンボイス、シングルボイス」。私や高村先生(『福島県放射線健康リスク管理アドバイザーとして - 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授・高村昇氏に聞く』を参照)など、少数の人間が同じことを言うことが大事でした。今後はチーム、あるいは学術団体などが同じスタンス、同じ基準で話をし、住民と接していく。これが今から求められることです。長期戦になりますから。 学問的には、「広島、長崎、福島」というのは、歴史に残る。かたや原爆の災害、一方は原発の災害。お互いが連携、協調する。低線量の放射線の環境の中で生活し続けることの管理は、国が責任を持って取り組む必要があります。 ――5月末に、福島県民約200万人を対象に健康調査を実施する方針が示されました。 福島県民健康管理調査検討委員会が設置され、私が委員長を務め、検討しています。国からはいろいろ言われましたが、約200万人の全福島県民を対象にしないと納得は得られないでしょう。 ――福島県の今年度補正予算では、健康調査の費用として約38億円しか計上されていません。これで約200万人の健康調査は可能なのでしょうか。 その通りです。本来は県が国に上げて、中長期的に取り組むべき課題です(編集部注:国は2011年度第2次補正予算で、1000億円規模の健康管理のための基金を設立することを検討)。私はそれについて何かを言える立場にありませんが、医学的にどんな対応をすべきかについては提言していきます。 ――具体的にはどんな調査を実施するのでしょうか。 今週の土曜日に(編集部注:6月18日)、福島県民健康管理調査検討委員会の第2回の会議を開催し、聞き取り調査の内容をはじめ、骨子をまとめる予定です。 今回の場合は、将来の発がんリスクが問題になります。放射線を外から浴びた時の発がんリスクと、内部被曝の発がんリスクを分けなければいけない。一番のリスクは放射性ヨウ素による内部被曝なのです。つまり、小児のがん。そのための課題は二つ。第一は、被曝線量をいかに正しく評価するか。第二は、どの病気にターゲットを絞って検証するか。その両方とも、我々はチェルノブイリで取り組んできました。 ――被曝線量を正しく評価するには、レトロスペクティブに見る必要があります。 ※(引用者注:レトロスペクティブ=回顧的) その通りです。行動調査を行い、「いつ、どこにいたか」を把握し、「SPEEDI」(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)による環境中の外部線量を基に計算するやり方があります。もう一つは、避難者を対象に1次スクリーニングしているわけですから、実際に測定したデータがある。そうした方々の行動から、逆算して計算する。ただし、すべてこれらは推計値であり、時には相当の誤差が出ます。 これもチェルノブイリで経験していますが、線量の評価は何年もかかるのです。あくまで、シミュレーションなので。 なお、あまり言われていませんが、放射線の本当のリスクがある方々は多くはありません。母集団は非常に小さいため、何年追っても、なかなか疾患の発症頻度に差は生じないでしょう。しかし、それでも誰かがきちんとタクトを振り、責任を取らなければいけません。 研究者が興味を持つテーマでもないでしょう。出るかどうか分からない放射線の影響を、誰が責任を持って30年追うかという問題です。 ――追跡期間は少なくても30年になりますか。 普通は「がん年齢」にならないと、がんにはならない。チェルノブイリは、異例でした。放射性ヨウ素の内部被曝による影響が出た。今回は食物の流通を制限していますから、それはほぼ無視できると思います。この点を踏まえても、甲状腺の被曝線量の高い人たちは限定されてくるわけです。 ――水素爆発が起きた時に、原発の周囲にいた方々でしょうか。 そうです。なぜ国が「計画的避難区域」を設定したかがキーポイントです。福島第一原発から半径20km圏内の人は、3月12、13日までに避難していますから、ほとんど被曝していません。20kmから30kmの間にいた方々。これらの人に対する被曝線量の再評価は、重要です。 ――今、ホールボディーカウンターで体内放射線量を測定して、分かることはあるのでしょうか。 直後に測定すればよかったのでしょう。しかし、もう3カ月経っていますから、放射性ヨウ素はゼロ。セシウムが検出されるかどうかですが、バックグランドレベル、ほとんど無視できるレベルだと思います。 ――ではその時の被曝レベルを推定する方法はないのでしょうか。 尿などを検査する方法はあります。ただし、まだ研究段階の手法ですが。 ――また先ほど、「どの病気にターゲットを絞り、検証するか」という課題もあるとお聞きしました。甲状腺がんが中心になるのでしょうか。 そうだと思います。甲状腺がんは頻度が高い疾患。小児の白血病は10万人に1人程度の発症率ですから、それだけの母集団がないと分かりませんが、甲状腺疾患は100人に一人。被曝線量が層別化できれば、甲状腺がんとの関係を把握しやすいでしょう。 ――その辺りを今週の土曜日(6月18 日)に議論する。 はい、専門家はごく一部ですから、ワーキンググループなどで検討を進めることになると思います。 ただ、先ほども言いましたが、放射線による健康影響はすぐに出るものではありません。しかも、「自然の発がんのリスクを少し押し上げる程度のリスク」というのが、広島、長崎のデータ。だから、放射線の影響だ、とはなかなか言えない。しかし、やはりリスクはゼロとは言えない。だから、不信と不満が生じ、皆が「放射線恐怖症」になっている。リスクがゼロでなければ、きちんと補償、管理をしなければいけない。繰り返しますが、これは国の責任だと思います。 そこでなぜ広島、長崎が福島に応援団を送るか。それは我々のノウハウを生かさないといけないからです。しかも、短期戦ではなく、長期戦。だから、今回のように、立ち上げのお手伝いをする。もう一つは、マンパワー、予算、拠点の確保。今、福島ではマンパワーが不足しています。平時の診療体制しかなかったところに、エキストラのことをしなければならなくなった。そのためのオールジャパンの体制を作るのが、我々の仕事です。 ◆Vol.5 正しいことを言えば通じると考えていた~リスク・コミュニケーションの仕方は反省 Textソース:http //docg.blog135.fc2.com/blog-entry-1292.html 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く◆Vol.5 http //www.m3.com/iryoIshin/article/138472/ 2011年7月12日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) ――なぜ情報が正しく伝わらず、安心を求めるのか。 放射線は見えない。分かりにくい。あおられる、皆の口コミで、「危ない」と広がる。「水道水が危ない」となり、ペットボトルの買いだめに走る。集団ヒステリーに近い形で、パニックになる。 そうしたものに対して私たちは無防備だった。「正しいことを言えば、通じる、分かってくれる、大丈夫だ」と思っていました。しかし、実際には叩かれる。それに対して、ブロックしたり、ウソの情報、間違った情報をつぶすという考えは頭になかった。まずは危機管理、パニックを抑えることから始めた。この点は、非常に反省しています。これが私のリスク・コミュニケーションの最大の欠点。ただ、これだけ長く続くとは思わなかった。もっと早く収束すると思ったという事情もあります。 ――それは原発事故の対応のことでしょうか。 そうです。原発事故が収束しないと、リスク・コミュニケーションは難しい。火中の栗を拾ったというのは、そうした意味なのです。 ――5月の初めに、福島の二本松市で講演した内容は、「You Tube」などでも流れています。 地元以外の方もたくさん来ていました。「ここは危ない、逃げろ」といったビラを配る。その後、別の講演会では、講演の後にインタビューを受けたりもしましたが、一部のみがカットされ、ネット上に流れる。情報が操作されていると分かりました。 インターネットで情報が瞬時に広がり、不特定多数の人たちが何でも言える時代。今回、私は初めてこうしたことを経験した。だから、我々も防御しなければいけないのですが、全く無鉄砲で、素手で入っていった。いい教訓だと思います。国、あるいは専門家などが、社会に対して正しい情報をいかに発信していくかは課題でしょう。 ――医師が専門家として意見を言っても、正しく伝わらないことが少なくない。 “人間学”として考えた場合の人の心理です。何かに頼りたい、すがりたいのです。今までの我々の日々の生活は、剣が峰を覚悟して選ぶようなことはしてこなかった。お任せだった。その典型が原発安全神話だと思うのです。これが崩れたことは、日本の一つの大きなシステムが崩れたことを意味します。日本は変わる時なのです。だから僕は覚悟したわけです。長崎でがんばってもいいのですが、火中の栗を拾うことは、やはり一つの転換点になる。広島、長崎、チェルノブイリで蓄積されたノウハウを生かすことができればと考えた。 ――今、どれくらいの割合で福島に行かれているのでしょうか。 東京での仕事も結構多いので、東京と福島を往復し、長崎にはほとんど帰れない日々です。震災前、私は研究科長(編集部注:山下氏は、長崎大学大学院医歯薬総合研究科長)の仕事をし、研究も行い、海外にも結構行っていました。しかし、この3カ月間は、ほぼすべての会合をキャンセルし、日本にいた。私にとっても非常事態だからです。 ――今後も、福島県民の健康調査と住民への啓発活動を続ける。 幸い、(長崎大学の)学長、教授会、教室のスタッフは、私の活動を後押ししてくれています。今、問われているのは、リスクとベネフィットをどう考えるか、福島県民がどう選択するかという問題です。その選択は国が命令するものではありません。個々人がジャッジできるような情報を我々が提供するのが仕事。その時に誤った情報は与えたくないし、誤った情報が伝わることもよくない。 しかし、今、多くの方が後方、外野席にいます。皆、評論家なのです。現場から出てきた情報をどう吸い上げ、問題を解決するかが重要。それは行政がやるべきことで、政府がお金を付けるべき。それが全部、丸投げなのです。また本来ならば現地災害対策本部は現地にあるべきでしょう。今は約60km離れた福島市にあるわけです。もう3カ月経ったのだから、本来は現場に行かなければいけない。しかし、そうした発想が全くない。 ――福島県で、そうしたことをやる人がいないのでしょうか。 医療者などにはがんばっている人がたくさんいます。私はこうした人を上手に束ねていきたいと考えています。 ――今、医療は福島県立医大が中心になっているのでしょうか。 もう一つは医師会です。医師会の先生方がフロントラインで、診療の合間に、「放射線は心配ない」と言ってあげれば、地域は安定化します。医療は本来、一対一の関係で成り立つものであり、今回の問題もそれが基本だと思うのです。 ――啓発活動も、マスで実施していくのではなく、一対一でやっていく必要がある。 そうです。コミュニティーベースで広げていかなければなりません。放射線に対する“リハビリ”を進めていく。医療関係者が、診療の現場で、「心配は要らない、もう大丈夫」と言ってあげれば、それだけで落ち着く。私は、これまで集団を対象にやってきたことを個別にやっていくようなネットワーク作りをやっていきます。 県や大学を支援しながら、福島を支えていく。それが私のこれからの仕事です。 ちなみに山下さんは福岡県立医大の副学長に就任する(任期は来年3月まで)。 ※(引用者注)福岡県立医大→福島県立医大 なお、県内の市民団体の中には県アドバイザー解任を求めているものもある。 ここでは論評は差し控えますが、印象に残った発言は、 「原発事故が収束しないと、リスク・コミュニケーションは難しい」 “収束が見込めない原発事故” という条件のもとでのリスク・コミュニケーション、というものも考えないといけないかも知れませんね。 (付録)学会情報例 http //kodomo-kenkou.com/shinsai/info/show/989 シンポジウム3「放射線被曝うけた小児の検診のあり方について」 2011年07月05日(火) 17 58 第19回日本がん検診・診断学会総会 http //npo.jacdd.org/taikai19/index.html 日時 平成23年8月5日(金) 15:30~17:00 会場 第1会場(国立病院機構 名古屋医療センター 外来管理棟5階講堂) http //www.nnh.go.jp/guide/index.html テーマ シンポジウム3「放射線被曝うけた小児の検診のあり方について」 構成 座 長:檜山英三 広島大学病院 細井 創 京都府立医科大学 演 者:島田義成 放射線医学総合研究所 ※(引用者注)島田義也か 皆川真規 千葉県こども病院 原田正平 (独)国立成育医療研究センター 細矢光亮 福島県立医科大学小児科 http //kodomo-kenkou.com/shinsai/info/show/988 第63回北日本小児科学会 会期:2011年9月10日(土) 会場:エスポワールいわて(岩手県盛岡市中央通1-1-38) TEL FAX:019(623)6251 会長:千田勝一教授(岩手医科大学医学部小児科学講座) 開催概要: 特別講演 平家 俊男教授(京都大学大学院医学研究科 発生発達医学講座 発達小児科学) 教育講演 奥山 眞紀子部長(国立成育医療研究センター こころの診療部) コーヒーブレイクセミナー 早坂 清教授(山形大学小児科学講座) 教育セミナー 小山耕太郎教授(岩手医科大学小児科学講座) 長崎大・山下俊一教授の『語録』
https://w.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/3122.html
長崎大・山下俊一教授の『語録』 m3.comインタビュー 6/14実施 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く(批判編) 山下俊一氏は、医事従事者会員限定サイトm3,comのインタビューを受けています。 http //www.m3.com/iryoIshin/article/138471/ http //kodomo-kenkou.com/ などから拾ってみました。 おいおいに、また順不同に私なりの批判点を書き込んで参るつもりです。ときどきここを覗いてみてください。また、読者の皆さんからの批判点指摘ボックスを最下欄に設けました。 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く(批判編)◆Vol.1 「福島は心配ない」と言える理由はある~水素爆発直後でも個人線量は1週間で約20μSv ◆Vol.2 多様な発がんリスクをどう捉えるか~政府の情報開示のあり方には問題あり ◆Vol.3 最初から火中の栗を拾う覚悟だった~“情報災害”の渦中の福島県民を救うのが目的 ◆Vol.4 福島県民の健康管理はオールジャパンで~広島、長崎の知恵生かす、最終責任には国にあり ◆Vol.5 正しいことを言えば通じると考えていた~リスク・コミュニケーションの仕方は反省 批判点指摘欄 (付録)学会情報例シンポジウム3「放射線被曝うけた小児の検診のあり方について」 第63回北日本小児科学会 ◆Vol.1 「福島は心配ない」と言える理由はある~水素爆発直後でも個人線量は1週間で約20μSv Textソース:http //kodomo-kenkou.com/shinsai/info/show/985 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く◆Vol.1 http //www.m3.com/iryoIshin/article/138471/ 2011年6月29日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) 島県放射線健康リスク管理アドバイザーとして、福島第一原発事故直後から、放射線による健康被害の影響に関する啓発、相談活動に取り組んできたのが、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏。 様々なエビデンスや福島の放射線量などを踏まえ、「安心」を説く山下氏の言動に対しては批判もあるが、「誰も動かなかった。だから、火中の栗を拾う覚悟で福島に行った」と山下氏は言う。放射線の被曝リスクの考え方やこの3カ月間の活動のほか、今後の福島県民の健康管理のあり方などについてお聞きした(2011年6月14日にインタビュー。計5回の連載)。 山下俊一氏は、「今の放射線防御の基準は、広島、長崎のデータが基準になっている」とし、疫学調査の重要性を説く。 ――まず低線量の放射線被曝による健康への影響について、現在分かっていること、科学的なエビデンスをお教えください。 人類が放射線の存在を知ったのは、わずか100年くらい前のことです。1895年にレントゲンがX 線を発見、翌年にベクレルが放射線を見つけた。放射線が発見されてからは、「これは便利なものだ」と、様々な場面で使われるようになった。例えば、いぼ、たこなどの治療にも使われた。 その結果、すぐには症状が出なかったのですが、放射線を当てた場所に後からがんが生じてきた。キューリー夫人も白血病で亡くなっています。しかし、最初は皆、放射線の危険性が分からなかった。 戦後、広島、長崎における約12万人の健康影響調査(編集部注:放射線影響研究所が1950年以降、実施している疫学調査)の結果、1回に外から浴びた放射線量が100mSvを超えると、発がんのリスクが高まることが明らかになってきた。まず白血病が被爆の5~7年後をピークに増えたのですが、その後は減少した。放射線の怖さが減ると思った頃、10年後から少しずつ他のがんが増えてきたわけです。 広島、長崎以外にも、データが結構あります。例えば、イスラエルでは建国時、様々な国から戻ってきた人に、ダニや白癬菌などを殺すために放射線を使った。その時に被曝した子供たちをフォローアップしています。そのほか、医療被曝、つまり放射線で治療をした子供たちなどに関するデータもあります。これらを全部集めてでき上がったのが、今の放射線の安全防御の基準です。 ICRP(国際放射線防御委員会)の勧告で示されているのが、「いかなる場合も100mSvを超さない」という基準。UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)が、毎年会議を開き、様々なデータを検討している。それを基に、IAEA(国際原子力機関)やWHO(世界保健機関)などが放射線に関する健康管理のリスクの基準として使っているわけです。 このように放射線の安全防御については100年近く議論されており、特に戦後、データが蓄積されてきた。ただし、これらは基本的には1回の外部被曝の影響です。それに対し、チェルノブイリは内部被曝。環境汚染の中で放射線被曝をした結果、どんな健康影響が出るかがこの25年間議論されてきたわけです。 明らかになった一つが、放射性ヨウ素による内部被曝で、子供の甲状腺がんが増えること。その被曝レベルが議論になったわけですが、線量は実測ではなく、後から計算で出すことになる。しかし、100mSvなのか、50mSvか、あるいは 1000mSvなのかが分からない。誤差がものすごく大きい。それでも、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、米国、ヨーロッパ、日本が協力して、いろいろな計算式で国際基準を作り、「100mSvを超すと明らかにリスクが高まる」ことが分かってきたのです。 ――内部被曝も100mSvが基準になる。 たまたま外部被曝も内部被曝も、基準が一緒だった。どちらも100mSvを超えると発がんリスクが高まる。ただ、子供については、やはりそれよりも厳しい基準にする、50mSvを超さないようにすることが現在議論されています。ただ今は、100mSvで線引きされています。 つまり、100mSvの根拠は、非常に明確なのです。世界中の研究者が何百人も集まって、何千という論文を検証して基準が作成されている。これを上回るデータはなく、その根幹を成すのは、広島、長崎の疫学調査です。 ――「外部被曝で100mSv」という基準が作られたのはいつ頃でしょうか。 ICRPでも、UNSCEAR も、1970年代、80年代ごろから出ています。原発で働く人は1970年代、80年代が恐らく一番多かったと思うのですが、ILO(国際労働機関)による、「年間50mSvを超えない、5年間で100mSvを超えない」という基準が世界で遵守された。 ――広島、長崎は一度の放射線被爆とのことですが、瓦礫などに放射線が蓄積され、それにより、低線量で長期に被爆することは想定されていないのでしょうか。 ありますが、その量は外部被爆に比べると、微々たるものです。ケタが違う。だから、ほとんど無視できるくらいになる。また世界的に見れば、ハイバックグラウンドのエリアは幾つもあります。飛行機のパイロットやスチュワーデスも、年間数mSvを浴びています。そういう方々の長期の影響を見ても、発がんリスクの上昇は見られません。放射線による影響は、閾値がない直線モデルで考えられていますが、100mSv以下のレベルはあくまでもグレーゾーンなのです。 ――科学者ではなく、一般の方にこのグレーゾン、つまり「分からない」ことを、先生は健康リスク管理アドバイザーとしてどのように説明されるのでしょうか。分からないことをそのまま「分からない」と表現すると、一般の方は不安に思う懸念もあります。 私が最初に福島に行った3月18日には、ほとんど何も情報がなかった。だからまず100mSvを超えないという自信がないと、「心配は要らない」とは言えないわけです。そこで計算したら、どんなに多く見積もっても、(年間積算線量は)100mSvにならなかった。3月15日から、うちの若いスタッフが福島で活動を開始しています。水素爆発が起きた直後の一番高い時です。その時にガイガーカウンターで測定した空間線量は20μSv/hくらいだった。 ――それはどこで測定したのですか。 福島市です。高いところでは25μSv/hありました。しかし、彼らは個人線量計を約1週間つけていましたが、個人線量計の値と、空間線量による年間積算線量の予測値には10倍以上のギャップがありました。今、小学校でフィルムバッチをつけて測定する動きがありますが、空間線量からは年間数mSVになるかもしれませんが、実際測ってみればすごく低い値になるでしょう。 ――ずっと戸外にいるわけではないからでしょうか。 はい。生活パターンから考えると、裸で24時間、戸外にいるわけではありません。文部科学省は、「学校の校庭等の年間放射線量は20mSv、空間線量率3.8μSv/hを超えない」という基準を出しましたが、これは外には8時間いるという前提。実際にはそれほど長くいないでしょうし、今の空間線量はそれほど高くはありません。 ――1週間福島にいたスタッフの個人線量計の線量はどのくらいだったのでしょうか。 1日3~4μSv、1週間で20μSvぐらいです。一番高い時で。1960年代、70年代の東西冷戦時代、核実験が行われていた時代は、日本国民はこれよりもケタが違う線量の放射線を浴びていました。 ――米国や旧ソ連などの核実験により、日本の空間線量は高かった。 そうです。しかし、その結果、がんが増えたという証拠はありません。米国では、ネバダでの実験の状況をオープンにしているため、どのくらい被曝したかが分かります。その量から考えても、今の福島の被曝量は、騒ぐほどでないことは明確です。 ◆Vol.2 多様な発がんリスクをどう捉えるか~政府の情報開示のあり方には問題あり Textソース:http //kodomo-kenkou.com/shinsai/info/show/986 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く◆Vol.2 http //www.m3.com/iryoIshin/article/138472/ 2011年7月1日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) 情報の不確かさが、住民の不安を招く要因になっていると山下俊一氏は指摘する。 ――放射線による健康影響については、一般の方に理解されていない、知られていない事実が多い そうですね。例えば、ここに10μSv/hの放射線を出す物質があるとします。それがどのくらい体に影響があるかを計算し、イメージで示すと、「一つの細胞に放射線がちょっと触るぐらい」。しかし、そのイメージを持てず、放射線が体を突き抜け、細胞に傷がたくさん付くと思う人が多い。専門家が分かりやすい絵を描いて、説明していかなければいけないと思うのです。 また医師も、無頓着、無防備で、放射線を使ってきたという一面もあります。リスクよりもベネフィットが多いから。つまり、医療においては、放射線を使う理由が正当化されていたわけです。 これに対し、今回、問題になっているのは、全くの被害者だから。全く便益がない。原発事故が収束して、放射線のレベルが下がることが最低限必要。したがって、今のこの状況下で皆が不安、心配に思うのは当然。では、何を心配しているか。一度に大量の被曝をするわけではない。低線量の被曝が続くことにより、将来、発がんのリスクが高まるかどうかが心配なのです。 今、日本人の2人に1人はがんに罹患する時代。1000人いれば、500人はがんになる。仮に100mSvの放射線を浴びたら、4、5人程度増える。これが今、心配されている放射線のリスクなのです。ほとんどの人は、ウイルスとか生活習慣病、タバコ、遺伝的な要因など、他の原因でがんになる。これらのリスクを総合的にどう考えるかが、一つの問いになるわけです。このようなリスク論は、論理的に考えないといけないのですが、やはり感情的な側面もあり、心配、不安はなかなか払拭しない。 本当は、まず男性が理解しないといけない。男性は40歳以上になると、広島、長崎のデータでは、被曝による発がんリスクはない。20歳以上でも、男性の場合はほとんどリスクが見られない。そのリスクがない男性が、「危ない」と騒いでいる。 私の説明の仕方も悪いのですが、女性にご理解いただくのが第一なのです。しかし、理解できない以上は、そこにいるだけでストレスなので、自主避難しかない。どう理解して、そこで生活するか。「リスクがゼロのところから、少し増えた。でも医学的にどう考えても影響がないレベルです」などと言っても、「リスクがある」ということだけで、不安になる。 こうした問題は、放射線に限らないと思います。環境ホルモンでもそうです。極めて微量なものでも心配する。電子レンジのマイクロ波による発がんも心配する。タバコもそう。つまり我々の周りには、発がんのリスクになるものが山ほどあるわけです。その中で、放射線だけを取り除くのは、不可能。さらに言えば、私たちの体は、寄生虫と共存しているわけです。体内の大腸菌などもゼロにできない。しかし、我々は免疫力などがあるために共存できる。 同じような体のメカニズムが、放射線に対してもあるわけです。DNAの損傷を修復する能力はすごい。細胞が分裂する時に起きるエラーを修復する能力を持っている。それと同じことを放射線による損傷に対してもしている。しかし、こうした感覚、知識は、急に降って沸いたリスクの状況下ではなかなか理解できない。 ――先生は3月18日から福島に行かれています。最初の頃は、先生が持つ知識を一般の人に伝えるために、どんな工夫をされたのでしょうか。この3カ月間で、説明の仕方などに変化はあるのでしょうか。 最初は、何も分からない状況だったので、火山や紫外線などに例えて説明していました。「放射線は火山のマグマ。ボンと爆発した。近くに行くと火傷するけれども、遠くにいれば、届かない」、「心配なのは、放射線の降下物。火山が爆発する際、遠くにいれば、火の粉は灰になっている。灰であれば心配要らない」という感じです。すると皆が安心する。放射線の単位も分からない中で、細かい話はできません。 でもそれは3月の終わりぐらいまでです。大きく変わったのは、文部科学省が「20mSv」を出した時(編集部注:4月19日に文科省は、「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」を公表)。 ――それまでは、「100mSv以下であれば安心」などとは言っていなかったのでしょうか。 「分からないから、心配しても仕方がない」、「100mSv以下は分かりません」などとずっと言ってきた。 ――「分かりません」というのは。 発がんのリスクは増えない。だから安心してくださいという意味です。「ここで、すぐに大量被曝するわけではないから、大丈夫です」、「逃げ出す心配は要りません」という話をずっとしてきました。 ―そこで文科省の「20mSv」の基準が出た。 ICRPでは、緊急時には20mSvから100mSvの範囲内で防護対策を取るよう勧告しています。その一番低いところを基準にした。当然、国の言うことに従わないといけないから、その基準を守りましょう、という話をしたわけです。 そうしたら、この20mSvは、緊急事故が収束した後の基準である「1mSvから20mSv」の20mSvという話も出てきた。原子力安全委員会と、文科省で、20mSvの根拠がふらついていた。私は現場にいたので、そうした話は全然分からなかった。 ――どこで線を引くかは、最終的には政治や行政がどう判断するかになる。 もちろんです。私としては、20mSvは妥当だと思います。これを超えないよう、また当然低いレベルを目指すということで、国がきちんと対応している、と私は信じているのですが。 それを市民がなかなか信じないのは、また別の要素があると思います。情報の不確かさ、遅さが問題。しかも、悪い情報が、後から出てくる。私も現場にいて、「なんだ、これは」と思うくらい、後から後から情報が出るわけでしょう。 ◆Vol.3 最初から火中の栗を拾う覚悟だった~“情報災害”の渦中の福島県民を救うのが目的 Textソース:http //kodomo-kenkou.com/shinsai/info/show/987 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く◆Vol.3 http //www.m3.com/iryoIshin/article/138472/ 2011年7月5日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) 住民への説明の仕方は、最初はクライシス・コミュニケーションだったが、その後、リスク・コミュニケーションに変わったという。 ――先生のお立場から見ても、政府や東京電力の情報の出し方は遅いなど、問題があるとお考えだった。 我々も情報をテレビで初めて知るぐらいでした。私が官邸に初めて呼ばれたのは、4月6日のことです。それまではもう現場一筋でした。 ――4月6日に官邸に呼ばれたのは、どんな理由からでしょうか。 原子力安全委員会には、40人を超す専門委員がいます。しかし、今回は官邸の一つの方針だと思うのですが、首相の直轄の形で、新たに専門家チームが作られました。その一つのチームの専門委員として呼ばれました。私は既に福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーでしたから、お断りしたのですが、強い依頼があり、お引き受けしました。 官邸で、他の専門委員の意見を聞いても、私と同じ意見でした。しかし、私の場合は、官邸で話をするだけでなく、それを住民に伝えなければいけません。最初は危機管理、クライシス・コミュニケーションの立場からお話していたのですが、4月に文科省から「数字」が出た以降は、リスク・コミュニケーションに変わりました。 ――クライシス・コミュニケーションとリスク・コミュニケーションの一番の違い、また先生が説明の際に心がけたことは何でしょうか。 クライシス・コミュニケーションの基本は、白黒はっきりしたことを言うこと。危ないか、危なくないか。皆をパニックにしないことが重要だからです。しかし、リスク・コミュニケーションの場合は、分からないところ、グレーゾーンの議論が出てきます。 ――グレーソーンの議論では、最終的に情報をどう解釈して行動するかは住民の判断になる。 その点は極めて重要ですが、その前にメディアがどう報道するかが重要。メディアが意図的に操作したり、一つの流れを作ったり……。週刊誌的な扱いをすると県民はますます不安に陥ります。 ――それは具体的にはどんな報道でしょうか。危険性をあおるような報道があるということでしょうか。 「ここは危ない、避難だ」と。平常時の放射線量を超えているから、「危ない」とする。これは絶対に言ってはいけない発言です。福島は、平常時ではないのです。まずこれをご理解いただきたい。福島県民に話をする時に、「皆さん、覚悟してください」とお話するのは、そのような意味です。決して、「危ないから、覚悟しなさい」という意味ではなく、「福島で生きる」ことは、基準が変わることなのです。 なぜ基準が変わるのか。平常時は、放射性物質を隔離し、封じ込めている。だから一般住民は被曝しないで済む。しかし、封じ込めに失敗した今は、環境が汚染された中でどう安全を担保するのか、という話なのです。しかし、少しずつ放射線を浴びても100mSvになることは、原発作業員は別ですが、普通の一般住民ではあり得ない。だから、パニックになったり、放射線の問題をずっと抱えていくことは、やはり不幸なことだと思います。 しかし、そのようには考えず、「あなたの子供に、どんな放射線の影響が出るかは分からない」とあおるのは、罪でしょう。しかも、医師ではない人が健康影響について発言している。我々は、原子力のことは全く分かりませんから、発言できません。しかし、病気のこと、放射線の影響のことは知っている。我々の言葉を信じずに、こうした人たちの言葉を信じるのはどうかと思います。 今は数字が一人歩きしています。出された数字に対するきちんとした説明が必要。これはやはり下手でしたね。 「20mSv」、「3.8μSv/h」という数字がポンと出ると、皆は「この基準は何か」、「これ以上は危ないのではないか」と思ってしまう。でも、放射線の安全防御基準は、「閾値なし」という考え方。「できるだけ低くしよう」というのは、正しい。しかし、「20mSv」を超えたからといって危険なわけではない。リスクをしっかりと認知するように働きかける必要があります。 ――「説明の仕方が下手」という話がありましたが、これが文科省の説明という意味でしょうか。 先ほども言いましたが、文科省と原子力安全委員会の意見に齟齬があり、私自身も驚きました。そんな状況では困ります。情報は常に一元化し、正しいことをぶれないで言い続けることが必要。さもなければ、住民は、“情報災害”の渦中に置かれ、住民は右に左に振れてしまう。 では、誰が舵取りをするか。最も信頼できる情報を出せるのは、政府機関なのです。日本の国民としては政府に信頼を置かなければいけません。国民と政府の信頼が最低条件です。 ――しかし、政府はきちんとした説明をしていない。 はい、だから我々が現場で説明しているのです。 先ほども言いましたが、最初は、白黒を明確にしなければいけない。これは危機管理の原則です。それをしなかった、できなかった、誰も。理由は簡単です。現地の災害対策拠点が崩壊して、最初の1週間、ほとんど何も情報がなかった。福島県は、「原発安全神話」の中で生きていたので、何かあった時にまず国に聞く。しかし、国に聞いてもタイムラグがあったり、別のところから情報が出てきたりして、現場は混乱の極み。そうした中で、誰も火中の栗を拾おうとはしなかった。 結局、誰も動かなかったので、私が福島に行ったわけです。最初は3月20日、いわき市を訪問しましたが、体育館で罵倒されながら話した。翌21日の福島市の会場にも何千人も集まりましたが、同じような状況だった。でも私は、皆の不安や不信がよく分かった。本来なら東電や政府が言うことを、私が話しているわけでしょう。誰かに不安や不信をぶつけたい、投げかけたいという思いだったのでしょう。全く不条理な被災をしたわけですから。まさに被害者。 だから我々は聞くしかない。でも我々が聞いても、皆の不安は解消されない。安心を期待しているわけだから。後で非難されることを覚悟しながらも、「心配は要らない」と言わなければいけない。その覚悟を現場で誰かが持っているかと見たら、誰もいなかった。私は福島に行く前に、(長崎大学の)学長に、「福島に行くということは、バッシングを受けることですが、いいですか」と聞いています。 ――最初から、非難を受けることを覚悟されていた。 はい。 ◆Vol.4 福島県民の健康管理はオールジャパンで~広島、長崎の知恵生かす、最終責任には国にあり Textソース:http //docg.blog135.fc2.com/blog-entry-1286.html 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く◆Vol.4 http //www.m3.com/iryoIshin/article/138472/ 2011年7月 日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) ――今はリスク・コミュニケーションの時期であり、それが今後も続く。 最初は、「ワンボイス、シングルボイス」。私や高村先生(『福島県放射線健康リスク管理アドバイザーとして - 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授・高村昇氏に聞く』を参照)など、少数の人間が同じことを言うことが大事でした。今後はチーム、あるいは学術団体などが同じスタンス、同じ基準で話をし、住民と接していく。これが今から求められることです。長期戦になりますから。 学問的には、「広島、長崎、福島」というのは、歴史に残る。かたや原爆の災害、一方は原発の災害。お互いが連携、協調する。低線量の放射線の環境の中で生活し続けることの管理は、国が責任を持って取り組む必要があります。 ――5月末に、福島県民約200万人を対象に健康調査を実施する方針が示されました。 福島県民健康管理調査検討委員会が設置され、私が委員長を務め、検討しています。国からはいろいろ言われましたが、約200万人の全福島県民を対象にしないと納得は得られないでしょう。 ――福島県の今年度補正予算では、健康調査の費用として約38億円しか計上されていません。これで約200万人の健康調査は可能なのでしょうか。 その通りです。本来は県が国に上げて、中長期的に取り組むべき課題です(編集部注:国は2011年度第2次補正予算で、1000億円規模の健康管理のための基金を設立することを検討)。私はそれについて何かを言える立場にありませんが、医学的にどんな対応をすべきかについては提言していきます。 ――具体的にはどんな調査を実施するのでしょうか。 今週の土曜日に(編集部注:6月18日)、福島県民健康管理調査検討委員会の第2回の会議を開催し、聞き取り調査の内容をはじめ、骨子をまとめる予定です。 今回の場合は、将来の発がんリスクが問題になります。放射線を外から浴びた時の発がんリスクと、内部被曝の発がんリスクを分けなければいけない。一番のリスクは放射性ヨウ素による内部被曝なのです。つまり、小児のがん。そのための課題は二つ。第一は、被曝線量をいかに正しく評価するか。第二は、どの病気にターゲットを絞って検証するか。その両方とも、我々はチェルノブイリで取り組んできました。 ――被曝線量を正しく評価するには、レトロスペクティブに見る必要があります。 ※(引用者注:レトロスペクティブ=回顧的) その通りです。行動調査を行い、「いつ、どこにいたか」を把握し、「SPEEDI」(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)による環境中の外部線量を基に計算するやり方があります。もう一つは、避難者を対象に1次スクリーニングしているわけですから、実際に測定したデータがある。そうした方々の行動から、逆算して計算する。ただし、すべてこれらは推計値であり、時には相当の誤差が出ます。 これもチェルノブイリで経験していますが、線量の評価は何年もかかるのです。あくまで、シミュレーションなので。 なお、あまり言われていませんが、放射線の本当のリスクがある方々は多くはありません。母集団は非常に小さいため、何年追っても、なかなか疾患の発症頻度に差は生じないでしょう。しかし、それでも誰かがきちんとタクトを振り、責任を取らなければいけません。 研究者が興味を持つテーマでもないでしょう。出るかどうか分からない放射線の影響を、誰が責任を持って30年追うかという問題です。 ――追跡期間は少なくても30年になりますか。 普通は「がん年齢」にならないと、がんにはならない。チェルノブイリは、異例でした。放射性ヨウ素の内部被曝による影響が出た。今回は食物の流通を制限していますから、それはほぼ無視できると思います。この点を踏まえても、甲状腺の被曝線量の高い人たちは限定されてくるわけです。 ――水素爆発が起きた時に、原発の周囲にいた方々でしょうか。 そうです。なぜ国が「計画的避難区域」を設定したかがキーポイントです。福島第一原発から半径20km圏内の人は、3月12、13日までに避難していますから、ほとんど被曝していません。20kmから30kmの間にいた方々。これらの人に対する被曝線量の再評価は、重要です。 ――今、ホールボディーカウンターで体内放射線量を測定して、分かることはあるのでしょうか。 直後に測定すればよかったのでしょう。しかし、もう3カ月経っていますから、放射性ヨウ素はゼロ。セシウムが検出されるかどうかですが、バックグランドレベル、ほとんど無視できるレベルだと思います。 ――ではその時の被曝レベルを推定する方法はないのでしょうか。 尿などを検査する方法はあります。ただし、まだ研究段階の手法ですが。 ――また先ほど、「どの病気にターゲットを絞り、検証するか」という課題もあるとお聞きしました。甲状腺がんが中心になるのでしょうか。 そうだと思います。甲状腺がんは頻度が高い疾患。小児の白血病は10万人に1人程度の発症率ですから、それだけの母集団がないと分かりませんが、甲状腺疾患は100人に一人。被曝線量が層別化できれば、甲状腺がんとの関係を把握しやすいでしょう。 ――その辺りを今週の土曜日(6月18 日)に議論する。 はい、専門家はごく一部ですから、ワーキンググループなどで検討を進めることになると思います。 ただ、先ほども言いましたが、放射線による健康影響はすぐに出るものではありません。しかも、「自然の発がんのリスクを少し押し上げる程度のリスク」というのが、広島、長崎のデータ。だから、放射線の影響だ、とはなかなか言えない。しかし、やはりリスクはゼロとは言えない。だから、不信と不満が生じ、皆が「放射線恐怖症」になっている。リスクがゼロでなければ、きちんと補償、管理をしなければいけない。繰り返しますが、これは国の責任だと思います。 そこでなぜ広島、長崎が福島に応援団を送るか。それは我々のノウハウを生かさないといけないからです。しかも、短期戦ではなく、長期戦。だから、今回のように、立ち上げのお手伝いをする。もう一つは、マンパワー、予算、拠点の確保。今、福島ではマンパワーが不足しています。平時の診療体制しかなかったところに、エキストラのことをしなければならなくなった。そのためのオールジャパンの体制を作るのが、我々の仕事です。 ◆Vol.5 正しいことを言えば通じると考えていた~リスク・コミュニケーションの仕方は反省 Textソース:http //docg.blog135.fc2.com/blog-entry-1292.html 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・山下俊一氏に聞く◆Vol.5 http //www.m3.com/iryoIshin/article/138472/ 2011年7月12日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) ――なぜ情報が正しく伝わらず、安心を求めるのか。 放射線は見えない。分かりにくい。あおられる、皆の口コミで、「危ない」と広がる。「水道水が危ない」となり、ペットボトルの買いだめに走る。集団ヒステリーに近い形で、パニックになる。 そうしたものに対して私たちは無防備だった。「正しいことを言えば、通じる、分かってくれる、大丈夫だ」と思っていました。しかし、実際には叩かれる。それに対して、ブロックしたり、ウソの情報、間違った情報をつぶすという考えは頭になかった。まずは危機管理、パニックを抑えることから始めた。この点は、非常に反省しています。これが私のリスク・コミュニケーションの最大の欠点。ただ、これだけ長く続くとは思わなかった。もっと早く収束すると思ったという事情もあります。 ――それは原発事故の対応のことでしょうか。 そうです。原発事故が収束しないと、リスク・コミュニケーションは難しい。火中の栗を拾ったというのは、そうした意味なのです。 ――5月の初めに、福島の二本松市で講演した内容は、「You Tube」などでも流れています。 地元以外の方もたくさん来ていました。「ここは危ない、逃げろ」といったビラを配る。その後、別の講演会では、講演の後にインタビューを受けたりもしましたが、一部のみがカットされ、ネット上に流れる。情報が操作されていると分かりました。 インターネットで情報が瞬時に広がり、不特定多数の人たちが何でも言える時代。今回、私は初めてこうしたことを経験した。だから、我々も防御しなければいけないのですが、全く無鉄砲で、素手で入っていった。いい教訓だと思います。国、あるいは専門家などが、社会に対して正しい情報をいかに発信していくかは課題でしょう。 ――医師が専門家として意見を言っても、正しく伝わらないことが少なくない。 “人間学”として考えた場合の人の心理です。何かに頼りたい、すがりたいのです。今までの我々の日々の生活は、剣が峰を覚悟して選ぶようなことはしてこなかった。お任せだった。その典型が原発安全神話だと思うのです。これが崩れたことは、日本の一つの大きなシステムが崩れたことを意味します。日本は変わる時なのです。だから僕は覚悟したわけです。長崎でがんばってもいいのですが、火中の栗を拾うことは、やはり一つの転換点になる。広島、長崎、チェルノブイリで蓄積されたノウハウを生かすことができればと考えた。 ――今、どれくらいの割合で福島に行かれているのでしょうか。 東京での仕事も結構多いので、東京と福島を往復し、長崎にはほとんど帰れない日々です。震災前、私は研究科長(編集部注:山下氏は、長崎大学大学院医歯薬総合研究科長)の仕事をし、研究も行い、海外にも結構行っていました。しかし、この3カ月間は、ほぼすべての会合をキャンセルし、日本にいた。私にとっても非常事態だからです。 ――今後も、福島県民の健康調査と住民への啓発活動を続ける。 幸い、(長崎大学の)学長、教授会、教室のスタッフは、私の活動を後押ししてくれています。今、問われているのは、リスクとベネフィットをどう考えるか、福島県民がどう選択するかという問題です。その選択は国が命令するものではありません。個々人がジャッジできるような情報を我々が提供するのが仕事。その時に誤った情報は与えたくないし、誤った情報が伝わることもよくない。 しかし、今、多くの方が後方、外野席にいます。皆、評論家なのです。現場から出てきた情報をどう吸い上げ、問題を解決するかが重要。それは行政がやるべきことで、政府がお金を付けるべき。それが全部、丸投げなのです。また本来ならば現地災害対策本部は現地にあるべきでしょう。今は約60km離れた福島市にあるわけです。もう3カ月経ったのだから、本来は現場に行かなければいけない。しかし、そうした発想が全くない。 ――福島県で、そうしたことをやる人がいないのでしょうか。 医療者などにはがんばっている人がたくさんいます。私はこうした人を上手に束ねていきたいと考えています。 ――今、医療は福島県立医大が中心になっているのでしょうか。 もう一つは医師会です。医師会の先生方がフロントラインで、診療の合間に、「放射線は心配ない」と言ってあげれば、地域は安定化します。医療は本来、一対一の関係で成り立つものであり、今回の問題もそれが基本だと思うのです。 ――啓発活動も、マスで実施していくのではなく、一対一でやっていく必要がある。 そうです。コミュニティーベースで広げていかなければなりません。放射線に対する“リハビリ”を進めていく。医療関係者が、診療の現場で、「心配は要らない、もう大丈夫」と言ってあげれば、それだけで落ち着く。私は、これまで集団を対象にやってきたことを個別にやっていくようなネットワーク作りをやっていきます。 県や大学を支援しながら、福島を支えていく。それが私のこれからの仕事です。 ちなみに山下さんは福岡県立医大の副学長に就任する(任期は来年3月まで)。 ※(引用者注)福岡県立医大→福島県立医大 なお、県内の市民団体の中には県アドバイザー解任を求めているものもある。 ここでは論評は差し控えますが、印象に残った発言は、 「原発事故が収束しないと、リスク・コミュニケーションは難しい」 “収束が見込めない原発事故” という条件のもとでのリスク・コミュニケーション、というものも考えないといけないかも知れませんね。 批判点指摘欄 名前 コメント すべてのコメントを見る (付録)学会情報例 http //kodomo-kenkou.com/shinsai/info/show/989 シンポジウム3「放射線被曝うけた小児の検診のあり方について」 2011年07月05日(火) 17 58 第19回日本がん検診・診断学会総会 http //npo.jacdd.org/taikai19/index.html 日時 平成23年8月5日(金) 15:30~17:00 会場 第1会場(国立病院機構 名古屋医療センター 外来管理棟5階講堂) http //www.nnh.go.jp/guide/index.html テーマ シンポジウム3「放射線被曝うけた小児の検診のあり方について」 構成 座 長:檜山英三 広島大学病院 細井 創 京都府立医科大学 演 者:島田義成 放射線医学総合研究所 ※(引用者注)島田義也か 皆川真規 千葉県こども病院 原田正平 (独)国立成育医療研究センター 細矢光亮 福島県立医科大学小児科 http //kodomo-kenkou.com/shinsai/info/show/988 第63回北日本小児科学会 会期:2011年9月10日(土) 会場:エスポワールいわて(岩手県盛岡市中央通1-1-38) TEL FAX:019(623)6251 会長:千田勝一教授(岩手医科大学医学部小児科学講座) 開催概要: 特別講演 平家 俊男教授(京都大学大学院医学研究科 発生発達医学講座 発達小児科学) 教育講演 奥山 眞紀子部長(国立成育医療研究センター こころの診療部) コーヒーブレイクセミナー 早坂 清教授(山形大学小児科学講座) 教育セミナー 小山耕太郎教授(岩手医科大学小児科学講座) 長崎大・山下俊一教授の『語録』
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08/19/2011 12 46 PM Studying the Fukushima Aftermath People Are Suffering from Radiophobia Japanese scientist Shunichi Yamashita is a leading expert on the effects of nuclear radiation. In a SPIEGEL interview, he discusses his work in communicating the potential dangers of exposure to residents living near the Fukushima nuclear plant. The professor says many suffer from severe radiation anxiety. How dangerous are low doses of exposure to radioactivity to humans? This question is heatedly debated within the scientific community. But it is not an easy time to convey details of that debate to the people in Japan living near the Fukushima nuclear plant who have now been exposed to the dangers of radiation. Radiation-protection specialist Shunichi Yamashita, 59, has made significant contributions to what is known about the effects of radioactive radiation. He has studied the survivors of the World War II atomic bombing of Nagasaki as well as the consequences of the 1986 reactor accident at Chernobyl, which he has visited nearly 100 times as part of a Japanese scientific envoy. He is currently researching the effects of the Fukushima catastrophe -- though his efforts are meeting with much resistance from local residents. SPIEGEL interviewed Yamashita about the expected effects of exposure in Fukushima and his plans to conduct one of the largest scientific studies even undertaken in the region. As part of the study, he hopes to examine the health effects of the nuclear disaster on some 2 million people. SPIEGEL The government of the Fukushima prefecture has invited you to inform people in the affected region about radiation risks. Right at the beginning, you said "The effects of radiation do not come to people who are happy and laughing, they come to people who are weak-spirited." What did you mean by that? Yamashita That was on March 20 during the first meeting. I was really shocked. The people were so serious, nobody laughed at all. SPIEGEL These people s villages and home towns are contaminated. Nobody knows about the invisible dangers. What did you expect? Yamashita The mood of the people was really depressed. From animal experiments with rats we clearly know that animals who are very susceptible to stress will be more affected by radiation. Stress is not good at all for people who are subjected to radiation. Besides, mental-state stress also supresses the immune system and therefore may promote some cancer and non-cancer diseases. That is why I told people that they also have to relax. SPIEGEL And to help people relax, you also said that doses of 100 millisievert per year would be fine? This is normally the limit for nuclear power plant workers in emergency conditions. Yamashita I did not say that 100 millisievert is fine and no reason to worry. I just said that below that threshold we cannot prove a higher risk for cancer. That is the evidence from research in Hiroshima, Nagasaki and Chernobyl. SPIEGEL But you didn t understand that your reassurances would make people even more angry and frightened? Yamashita I think it really contributed to the confusion that the Japanese government decided to set the standard for yearly maximal dose at 20 millisievert. The International Commission on Radiological Protection suggests a limit between 20 and 100 millisievert in a situation with a nuclear emergency. Which threshold you pick is a political decision. You must weigh the risks and benefits, because any evacuation will also have risks. The Japanese government chose the most careful radiological approach. That made people more confused and insecure. SPIEGEL Your comments have made you a controversial figure. A Japanese journalist wants to sue you. Anti-nuclear activists ... Yamashita ... they are not scientists, they are not doctors, they are not radiation specialists. They do not know the international standards, which researchers worked on very hard. It makes me sad that people believe gossip, magazines and even Twitter. SPIEGEL Why should the people trust experts who have been telling them for decades that nuclear power plants are 100-percent safe? Yamashita I was surprised when I arrived in Fukushima that nobody was prepared for such a disaster. I used to advise China and states of the former Soviet Union on radiation protection. Now we have a tremendous accident in my own country and are not prepared. People in Fukushima did not even know that there are 11 reactors in their region. The medical faculty of the University of Fukushima didn t have a single specialist in radioprotection medicine. SPIEGEL Would you address the people affected by the accident in a different manner today? Yamashita In a situation where people had no understanding of radioactivity at all, I wanted to be very clear. I have now changed my communications approach from black-and-white to gray scale. SPIEGEL People want clear answers. Where is it safe? And where is it not? Yamashita We don t have those answers. When people ask me "Are doses below 100 millisievert 100 percent safe?" Then I have to answer as a scientist "I don t know." SPIEGEL From previous studies we have learned that if 100 people are exposed to levels of 100 millisievert, statistically speaking, one person will get cancer because of the radiation. Is it possible to project the level of danger of lower doses? Yamashita That could be. The problem is that to estimate the risk for disease we use the so-called linear-nonthreshold dose-response model, which assumes that even a small additional radiation dose would cause a small increase in cancer incidence in an exposed population. Such an increase is theoretically measurable, but with the doses below 100 millisievert it is statistically insignificant and thus cannot be considered as an argument in support of excessive risk. Also, with a tumor we do not know what caused it. Radiation does not leave a diagnosable signature. From radiation biology we also know that smaller doses can damage human DNA. But the human body can effectively repair those injuries within a short time; this is a natural intrinsic protective mechanism. That is what I am trying to tell the people. SPIEGEL And what should people do with this kind of information? Yamashita With low radiation doses the people have to decide for themselves whether to stay or to leave. Nobody can make that decision for them. They have to weigh the risks and benefits Moving can mean a loss of jobs and having to change schools for the children. These factors cause stress. On the other hand, this family might be able to avoid the risk of cancer, even if it is only minimal. SPIEGEL That families affected by the nuclear accident are being forced to make any such decision is a terrible burden. Yamashita Yes. Therefore Tepco and the Japanese government should support people in their decisions. They should support those who want to stay as well as those who think even more than one millisievert is too high. SPIEGEL What kind of health risk from the radiation will the people around the plant in Fukushima have to face? Yamashita I do not think there will be any direct effect of the radiation for the population. The doses are too small. SPIEGEL So you don t think there will be any cases of cancer or cancer deaths? Yamashita Based on the data, we have to assume that. Of course, the situation is different for the workers in the plant. SPIEGEL Now you are already talking about something you actually intend to research. You plan to monitor the health condition of the residents of Fukushima for the next 30 years. Yamashita In the current situation, it is very difficult for us to be accepted by the local residents. We have to make the best medical care possible for these people the first priority. SPIEGEL Do you think adopting a more understanding tone than you have up until now would help you to gain acceptance? Yamashita Because of the accident, Tepco and the Japanese government have lost the trust of the people in Fukushima completely. The people are suffering, not only because of the earthquake and the tsunami, but also from severe radiation anxiety, real radiophobia. Therefore we have to lower the anxiety (and) give them some emotional support. And, later, we can open the discussion about epidemiological studies. Without the support of the local people, we cannot do anything. In this situation it doesn t even help that I am the expert from Nagasaki and Chernobyl. This is why I moved to Fukushima. SPIEGEL Who do you want to examine in your study? Yamashita There are three groups. The workers, the children and the general population. The workers are exposed to high-dose radiation. We surely need to monitor them to follow the effects concerning cancer and other diseases. The general population would be divided into two groups One that was exposed to relatively low radiation and one that was exposed to relatively high radiation. The Fukushima government health office is just finishing a pilot study with which they have questioned 26,000 people. SPIEGEL But the people don t know how much radiation they were exposed to. Yamashita That is what we have to find out. We ask where the people were on March 11 at what time and then we ask those questions for every day in March. We also ask what people ate the first two weeks after the accident, what material their house or apartment is built out of. We want to connect these data with information of the distribution of the radioactive cloud and calculate the dose after the fact. SPIEGEL How many people should participate? Yamashita All 2 million residents of Fukushima prefecture. It is a big task and would set a science record. The government just decided about compensation payments for people affected by the nuclear accident. Through such applications we want to try to contact also those who moved outside of Fukushima. SPIEGEL What about the children? Yamashita We want to test the thyroids of all children under 18, altogeher 360,000 children, with ultrasound. After exposure to radiation it takes about five years until thyroid cancer first develops. We know that from Chernobyl. SPIEGEL Are you also researching the mental effects of the disaster? Yamashita Of course. We know from Chernobyl that the psychological consequences are enormous. Life expectancy of the evacuees dropped from 65 to 58 years -- not because of cancer, but because of depression, alcoholism and suicide. Relocation is not easy, the stress is very big. We must not only track those problems, but also treat them. Otherwise people will feel they are just guinea pigs in our research. Interview conducted by Cordula Meyer URL http //www.spiegel.de/international/world/0,1518,780810,00.html RELATED SPIEGEL ONLINE LINKS Japan s Nuclear Cartel Atomic Industry Too Close to Government for Comfort (05/27/2011) http //www.spiegel.de/international/world/0,1518,764907,00.html Poisoned Fields The Painful Evacuation of a Japanese Village (06/01/2011) http //www.spiegel.de/international/world/0,1518,765949,00.html 2011.8.19 SPIEGEL記事 ※Der Spiegel(デア・シュピーゲル) ドイツの週刊誌。発行部数がヨーロッパで最も多いニュース週刊誌。 毎週平均110万部が売られる。 原発事故、その後のFukushima 放射能恐怖症に直面する人々 日本の科学者 山下俊一氏は放射線の影響の分野において主要な人物である。 SPIEGELのインタビューで彼は、福島原子力発電所近くに住む住民の被曝の危険性予測について話す。教授は、多くの人々が深刻な放射線への不安に直面していると言う。 低線量での被曝はどのくらい危険性があるのか?この疑問は科学者の間でも激しく議論されるところである。しかしこういった現在の議論の詳細は、実際に今放射線の危険性にさらされている福島の住民に伝えることは容易なことではない。 放射線防護のスペシャリストである山下氏59才は放射線の影響についての知見に大きく貢献している人物である。山下氏は長崎の原爆後の生存者の調査、同様にチェルノブイリにおいても日本から派遣され、100回程チェルノブイリを訪れて調査を行っている。最近彼は福島の惨事についてその影響を調べているが、彼の努力は地元住民からの多くの反発を受けている。 SPIEGEL は山下氏に被曝の影響の予測と、彼が指揮し、福島で実施される最大規模の科学的研究の一つとなるであろう今回の調査研究についてインタビューを行った。 研究の一部では、彼は200万人程度の人々に対する原子力災害下の健康影響について調べる事ができると期待している。 SPIEGEL:福島県は、放射線のリスクについて影響を受けた地域の住民に情報を提供して欲しいとあなたを招きました。当初あなたは”放射線の影響は幸せだったり、笑っている人には来ないものだ。放射線の影響は精神が弱っている人の所にやって来る”と言いました。それはどういった意味だったのでしょうか? Yamashita それは3月20日に私が初めての会合で言った言葉です。 人々がとても深刻で誰一人として笑わないのを見て、私はショックを受けました。 S そこにいた人々の地域や家々はすでに汚染されていました。誰一人として目に見えない危険性について知識を持っていなかったはずです。何を期待されていたのですか? Y 人々の雰囲気が本当に暗かったのです。ラットを使った動物実験により、動物は放射線の影響より、ストレスの方が、明らかに身体に影響を受けやすい事が分かっています。 放射線の影響下にある全ての人々にとってストレスはよくありません。 さらに、精神的なストレスは免疫機能を抑制し、その結果、癌やその他の病気を引き起こすこともあります。ですから、人々にリラックスしなければとも言いました。 S そこで人々をリラックスさせる為に年間100msvの被曝は大丈夫といったのですか? この数値は緊急時の原子力発電所で働く労働者のリミットです。 Y 私は100msvが大丈夫で心配する理由がないとは言っていません。 私は閾値以下では、癌のリスクが高まることを証明できないと言ったのです。 これは長崎・広島・チェルノブイリの調査でも証明されています。 S しかし、あなたの言葉が人々にさらに怒りや驚きを生み出すとは思わなかったのですか? Y 日本政府が最大で年間20msvを基準とした事は、人々に混乱を生みだした事につながったと考えています。ICRPは年間20から100msvを緊急時のリミットとしています。どんな避難でもリスクは伴うので、リスクとメリットをはからねばなりません。 日本政府は最も注意深い基準を選択しました。それが人々をさらに混乱させたり、危険なのではと思わせたのです。 S あなたのコメントはあなた自身を物議をかもしだす人物として人々に知らせました。 ある日本のジャーナリストはあなたを告訴しようとしています。 反原子力の活動家たちも・・・ Y 彼らは科学者でも、医者でも、放射線の専門家でもありません。彼らは調査員がかなりハードに研究したうえに決めた、国際的な基準を知らないのです。人々がゴシップや雑誌、ツイッターでさえも信じることに悲しみを感じます。 S 原子力発電は100%安全だと数十年もの間言い続けてきた専門家をなぜ信じなければならないのでしょうか? Y 事故後最初に福島に着いた時、誰一人としてそういった災害に準備して いなかったことに驚きました。私は中国や旧ソビエト連邦に対して放射線の 防護に関するアドバイスを行ってきました。今、大規模な災害が私自身の国で 起き、そして事故に対して準備されてはいなかったのです。福島の人々は自分たちの地域に11もの原子炉がある事さえも知らなかったのですよ。福島医科大学はたったの一人も放射線医学の専門家がいませんでした。 S 事故により影響を受けている人々に対し、今までとは違った態度で接していこうとは思っていますか? Y 放射能について全く理解していない人々に対しては明確にしていきたいと思っています。今は人々に対するアプローチの仕方を白黒明確なものから、多少グレイな感じでアプローチするように変えました。 S 人々は明確な答えを欲しています。安全はどこにあるのですか?そして安全ではないのは? Y 私達はそれについての答えを持ち合わせていません。”100msv以下は100%安全なのですか?”と聞かれます。私は科学者の立場から”知りません”と答えています。 S 最近の研究では、もし100人の人々が100msv被曝した場合、統計的に1人放射線により癌を発症することがわかりました。低レベルの放射線量でも危険性をはっきり示す事は可能なのでしょうか? Y たぶん可能だとは思います。問題は、私達がリスクを想定する為に用いる閾値なしの被曝線量の用量に対応したモデルは、被曝者にどんなに小さな追加線量でも僅かながら癌の発症の増加があることを前提としていることです。 そういった増加は論理的には測定可能ですが、100msv以下の被曝では統計的に無意味で、しかも極端に危険性を支持する論争と同様、考慮するに値しません。 また、腫瘍に関して、我々はそれが何で引き起こされたのかはわからないのです。 放射線は診断可能なサインを残してくれるわけではないですから。 放射性生物学によって、少量の被曝が人間のDNAにダメージを引き起こす事もわかっています。しかし、人間の体は短時間の内に効果的にその傷を治すことができます。自己免疫力です。それが私が人々にお話ししている事なのです。 S それでは人々はそういった情報を前にして何をすべきなのでしょうか? Y 低線量の被曝量では人々は自分でとどまるか、出ていくか決めなければなりません。誰もその決定を彼らに与える事はできません。彼らは自身でリスクとメリットをよく考えなければならないのです。そこから移動することは仕事を失う事にもなり得ますし、子供たちにとって学校を変わる事にもなりえます。これらはストレスを引き起こす要因となります。一方で、それがどんなに小さなリスクであったとしても、移動することを選んだ家族は癌になるリスクを避けることができた事にもなります。 S 今回の原子力災害の影響を受けた家族はそのような選択をしなければ ならないような困難な苦しみにあるのですね。 Y そうです。だからこそ、東電や日本政府はそのような選択の中にある人々をサポートしていかなければなりません。彼らは1msvでさえ高すぎると考える人々と同じようにそこにとどまり続けたい人々の事もサポートしていかなければならないのです。 S 福島原発周辺にいる人々はどういった放射線の健康リスクに直面しなければならないのでしょうか? Y 私は直接的な被曝の影響は人々に出ないと考えています。 線量もとても低いですし。 S あなたは癌の発症や癌の死者は全く出ないと考えているのですね? Y データにもとづけば我々はそう仮定しなければなりません。もちろん原子炉の中で仕事をする人々の状況はそれとは異なります。 S ところで、すでにあなたは調査の予定を進めているとお話ししていました。 今後30年間、福島の住民の健康管理をモニターしていくことを計画している のですね。 S 現況では地元の住民に我々が受け入れられる事はとても難しいです。 我々は最高の医療支援が住民になされるようことを優先して行っていかなければなりません。 S 今までよりも、住民を理解するような発言により、住民に受け入れられるようになると考えていますか? Y 事故により、東電と日本政府は完全に福島の人々の信頼をなくしました。 人々は、地震や津波ばかりではなく、放射線の過酷な不安にも直面しています。 しかしながら、我々は人々の不安を低減させたり、感情的なサポートをしていかなければなりません。そしてその後、疫学的な研究調査についても議論を始める事ができるのです。住民をサポートすることなくては、我々は何も することができません。その状況では私が長崎やチェルノブイリのエキスパートだとしても何も役立たないのです。私が福島へ越してきた理由はそこにあります。 S あなたの調査研究は誰を対象としたいのでしょうか? Y 3つのグループがあります。作業員(原子炉の)・子供たち・一般的な人々です。 作業員たちは高レベルの放射線に被曝しています。今後の癌や他の疾病についてモニターしていかなければならないことを確信しています。一般的な人々は2つのグループに分けられます。一つは比較的低い線量を被曝したグループ、もうひとつは比較的高い線量を被曝したグループです。福島県の健康事務所(健康保険福祉事務所?)は、26,000人の人々に対し予備的な質問調査を終えた所です。 S しかし、人々は自分たちがどれだけの線量を被曝したかわからないのではないでしょうか? Y そこが我々が見つけ出さなければならないところです。我々は人々が3月11日何時にどこにいたか、その後の3月中についても何時にどこにいたかを聞きます。更に事故後2週間何を食べたのか、住居やアパートなどが何で作られたものなのかを質問します。 それらのデータを放射性雲の範囲と結びつけ、実際の被曝量を計算するのです。 S どれくらいの人々が関わるべきなのでしょうか? Y 福島住民の200万人全てです。大きな任務ですし、また、科学的にも記録されるものとなるでしょう。日本政府は原子力事故により影響を受けた人々に対して補償(賠償?)することを決めたところです。その申請を通して、我々は福島以外に移動した人々にもコンタクトを取りたいと思っています。 S 子供たちについてはどうなのでしょう? Y 総数36万人の18歳以下の子供たちの超音波検査による甲状腺のテストをしたいと思います。被曝後、甲状腺癌が症例として表れるまで5年かかることがチェルノブイリからわかっています。 S 災害による精神的な影響についても調査しているのですか? Y もちろん。心的な影響がとても大きかったことがチェルノブイリからわかっていますから。65才から58才の人々の死因は癌ではなく、避難したことによる生活の変化が原因の、うつ病・アルコール依存症・自殺となっています。 移住は簡単なものではなく、ストレスがとても大きいのです。我々はその問題を追跡するだけではなく、治療もしていかなければなりません。そうでなければ人々は我々の調査のモルモットであると感じるでしょうから。
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放射能汚染とデマ汚染に抗す 黒鉄好のレイバーコラム「時事寸評」第10回: 被曝地フクシマで進行する戦慄の事態~ついに刑事告発された御用学者・山下俊一らの大罪を問う! http //www.labornetjp.org/Column/20110719kuro から転載 福島原発直後から、メディアに出ては根拠もなく「安全」「直ちに健康に影響はない」との言説を垂れ流し続けながら浮かんでは消えた御用学者たち。その中でしぶとく生き残り、被曝地フクシマにおいて被曝者そっちのけでうごめくのが山下俊一だ。 長崎大学医歯薬学総合研究科教授にして自身も長崎生まれの被爆二世だ。1991年からチェルノブイリ原発事故による被曝者治療にも関わった。本来なら、放射能の怖さを最もよく知り、福島で被曝者たちに正しい放射能対策をアドバイスしなければならない立場にある。 ところが、佐藤雄平・福島県知事の委嘱を受け、福島原発事故直後の3月19日、県の放射線健康リスク管理アドバイザーに就任した山下が取った言動は全くの正反対だった。福島県各地で「年間100ミリシーベルトの被曝までは安全」と触れ回ったのだ。 contents 被曝地フクシマで進行する戦慄の事態~ついに刑事告発された御用学者・山下俊一らの大罪を問う!初めは安全と大見得 毎日言うことをコロコロ変え、ついにはデタラメな放言1.「ふくしま市政便り」(2011年4月21日号)から 2.講演会「放射線と私たちの健康との関係」(2011年3月21日)から 師匠は「公害病の総合商社」 治療はせずにデータだけ取る~放射線影響研究所の恐るべき正体 「良心的な学者は来ない」 <参考文献・資料> 初めは安全と大見得 4月1日、飯舘村で行われた講演でも「放射性物質は飯舘村まで届かない」ので安全だと主張した。IAEA(国際原子力機関)が「飯舘村は全村避難させるべき」と勧告したのはその前日、3月31日のことだった。飯舘村全域が計画的避難区域となったのは4月中旬。山下の明白なウソで騙された飯舘村民は避難が遅れ、無駄な高線量被曝をさせられることになった。 5月、二本松市で開かれた講演会でも「安全というなら、あなたがお孫さんを連れて砂場で遊んではどうか」という市民に対し、山下は「みんなが信じてくれるのだったら、お安い御用だと思います」とまで大見得を切った。さらに、「(年間100ミリシーベルト以下の被曝は安全という)基準は日本の国が決めたこと。私たちは日本国民です。国の指針に従うのは国民の義務」と発言した。「君が代が流れ始めたら問答無用で立て、歌え」という石原慎太郎・東京都知事、橋下徹・大阪府知事並みのファシズム的恫喝だ。 そもそも年間100ミリシーベルトの被曝とは、原発労働者が白血病を発症した場合に労災認定を受けられる基準・5ミリシーベルトの20倍にも当たる。一般市民が1年中そうした高線量の中で生活して無事でいられるはずがない。 毎日言うことをコロコロ変え、ついにはデタラメな放言 3月下旬、いったん地元に戻った山下は、長崎新聞社のインタビューで「子どもや妊婦を中心に避難させるべきだ」と福島県内とは正反対の主張をした。「長崎から来たというだけで歓迎され、現地の人たちは安心する」という発言には山下の本音が見え隠れする。福島県民の自主避難の動きを抑えるため、長崎出身の被爆二世という自分の立場を最大限、政治的に利用してやろうという狙いだ。 山下は、講演会の会場で過去の発言との整合性を問われると「(100ミリ以下では)発ガンリスクは証明できない」「安全ではなく安心と言っただけ」などと突然、トーンダウン。「放射能の影響は実はニコニコ笑っている人には来ません。クヨクヨしている人に来ます」に代表される非科学的で無根拠な放言、「私は子どもたちより先に死にます」などという無責任な居直り発言もあった。 くどいと言われるかもしれないが、「証拠保全」のために山下が放ってきた安全デマや放言・暴言をさらにいくつか拾ってみよう。 1.「ふくしま市政便り」(2011年4月21日号)から Q.地域の環境放射線が一時間当たり数マイクロシーベルトとなっている。数週間、数カ月この環境に住み続けることで、蓄積したら数ミリシーベルトを超えることもあると思われるが大丈夫か? A.報道されている値はあくまでも屋外での空間線量です。それが屋内では一般的には5~10分の1くらいに減りますので、実際の被ばく線量は少なくなります。もちろん、蓄積されてどうなるか、を心配されるのはごもっともですが、現在の状況が継続すれば、健康リスクが出ると言われる100ミリシーベルトまで累積される可能性は、ありません。そして、同じ100という線量でも、1回で100受けるのと、1を100回に分けて受けるのとでは影響が全く違います。少しずつならリスクは、はるかに少ないのです。 Q.結婚したばかりだが、近い将来赤ちゃんがほしいと思っている。今の状況がとても不安だが、出産に問題はない? A.放射線について国際的なガイドラインを定めた国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告によると、100ミリグレイを下回る被ばくであれば、生まれてくる赤ちゃんについて心配の必要はありません。県下に住むお母さんのおなかの中にいる赤ちゃんが、今回の原発事故で100ミリグレイを上回る被ばくをするとは考えられませんので、心配する必要は全くないと思います。 Q.現在妊娠している。飲み水もみそ汁にまでもミネラルウオーターを使っている。野菜を洗うのも怖いが、どう対応するべきか? A.ミネラルウオーターがないから、水を飲ませない、ミルクをあげられないというのは、逆に乳幼児の健康によくありません。 2.講演会「放射線と私たちの健康との関係」(2011年3月21日)から 「これから福島という名前は世界中に知れ渡ります。福島、福島、福島、何でも福島。これは凄いですよ。もう、広島・長崎は負けた。福島の名前の方が世界に冠たる響きを持ちます。ピンチはチャンス。最大のチャンスです。何もしないのに福島、有名になっちゃったぞ。これを使わん手はない。何に使う。復興です」 この発言に至ってはもはや常人の感覚では全く理解できない。文面を読む限り、どう見てもフクシマが被曝して喜んでいるとしか思えない。「さあ、これから思う存分研究できるぞ。せいぜいがんばってもっともっと被曝してくれよ」と思っているようにしか見えないのである。ヒロシマ、ナガサキ、フクシマすべてのヒバクシャを貶める最も愚劣な発言であることは言うまでもない。 そうかと思えば、山下は医師会の講演では、若者を中心に年10ミリシーベルト以上の被曝は危険という主張をしている。時と場所により自分の主張をコロコロ変える。学者としての信念のかけらも見られない。 こうした事実が暴かれ、福島県民の間で批判が強まると、山下は驚くべき言動に出た。「飯舘や浪江、川俣の一部の数値が高いのを見て、自主避難ではダメだ、きちんと命令してあげないといけないと言ってきた」「30キロ圏内でも必要ならば避難させなきゃだめだとも言ってきました」などと、初めから自分が放射能の危険性を把握し、指摘してきたかのようなウソを言い始めた(「朝日ジャーナル」での発言)。それなら飯舘村民の避難が遅れたのは誰のせいなのだろう。 あまりにデタラメすぎて、書いているこっちのほうが疲れてくる。 師匠は「公害病の総合商社」 こうした人間性や品性のかけらもない学者はどのようにすれば生まれてくるのか。そのルーツをたどっていくと、閉じられた原子力村という世界における特殊な人間関係に行き当たる。 山下は、長崎大学で長瀧重信・長崎大学名誉教授の教えを受けた。山下の師というべき人物である。その長瀧の師に当たるのが重松逸造だ。重松、長瀧、山下は、チェルノブイリ原発事故後、IAEAの事故調査団に揃って加わり、事故の影響を最小限に見せるために非科学的な報告書を作成した事実が浮かび上がった。 長瀧の発言も拾ってみよう。「チェルノブイリ事故の被ばくのために亡くなった方は・・・(中略)全部入れても50人くらい」「(子どもたちの)知能の遅れや白血病などが言われていますが、それに関しても(IAEAの報告書は)『科学的影響は全くない』としています」「めまいや、頭が痛い、力が入らない、働く気がない、疲れて働けないなど、アンケート方式で聞きますと、被ばく地に住んでいる方たちには、そういう病気が非常に多いということです。IAEAでは『それはすべて心理的影響であろう。明らかな被ばく量との相関、あるいは我々の現在までの知識の中で、そういうものは被ばくと関係があるとは言えない』としています」((財)日本原子力文化振興財団発行の月刊「原子力文化」1996年7月号における発言)。 長瀧はあとで責任を問われないようにしたいらしく「IAEA」を主語にしている。だがその報告書は彼らがみずから作ったものだ。つまりそれは長瀧自身の思想であり発言だということに他ならない。重松に至っては「チェルノブイル(ママ)の事故が世界中に拡大し、反原発運動とか、主義、主張に利用されすぎているようですので、まず正しい情報ということですね。主義、主張はご自由ですが、チェルノブイルを変に利用してもらうのは困ると思います」(「原子力文化」1991年7月号)とまで語っている。放射能の危険を語る者に対し、自分の主義主張のためチェルノブイリ事故を利用しているだけだという悪罵を浴びせる人物についてこれ以上何を語る必要があろう。 だがそれでも重松を追うことにする。そこからは戦後の公害病や薬害のほとんどにかかわっている重松の姿が見えてくる。 「環境庁(当時)の水俣病調査中間報告「頭髪水銀値は正常」との見解を示す。水俣病の調査責任者として、水俣病被害者とチッソの因果関係はないと発表(1991年6月23日付け「読売新聞」)。 広島県、広島市共同設置の「黒い雨に関する専門家会議」の座長として、1991年5月、「人体影響を明確に示唆するデータは得られなかった」との調査結果をまとめた(1991年5月14日付け「毎日新聞」)。 環境庁の委託で原因を調査していた「イタイイタイ病およびカドミウム中毒に関する総合研究班」の班長として、カドミウムとの因果関係を認めず(1989年4月9日付け「読売新聞」)。 厚生省スモン調査研究班班長として「結局は後で原因と判明したキノホルムに到達することができませんでした」と、キノホルムとの因果関係を否定。 1993年1月13日、動力炉・核燃料開発事業団(当時)人形峠事業所が計画している大規模な回収ウラン転換試験の安全性を審査していた「環境放射線専門家会議」の議長として安全性に「お墨付き」を与え計画を承認。 もうおわかりだろう。重松はすべての公害病や薬害について、住民を切り捨て政府・財界の利益を守るため露骨に策動してきたのだ。何が「結局は後で原因と判明したキノホルムに到達することができませんでした」だ。とぼけるのもいい加減にしてもらいたい。 治療はせずにデータだけ取る~放射線影響研究所の恐るべき正体 重松も長瀧も理事長を務めた(財)放射線影響研究所(放影研)という団体がある。ホームページの「設立の目的と沿革」を見ると「平和目的の下に、放射線の人体に及ぼす医学的影響およびこれによる疾病を調査研究し、被爆者の健康維持および福祉に貢献するとともに、人類の保健福祉の向上に寄与する」とみずからの高邁な理想を語っているが、彼ら自身が認めるように「前身は1947年に米国原子力委員会の資金によって米国学士院(NAS)が設立した原爆傷害調査委員会(ABCC)」である。その意思決定は「日米の理事で構成される理事会が行い、調査研究活動は両国の専門評議員で構成される専門評議員会の勧告を毎年得て」進められる。「経費は日米両国政府が分担」することになっており、負担比率は半々だ。 いかに美辞麗句を並べようとも、「福島第一原子力発電所事故についてよくある質問Q&A」を見ると彼らの本質がよくわかる。例えば「放射線の種類にはどんなものがありますか?」というような当たり障りのない質問に彼らは実に饒舌に答える。一方で彼らにとって触れられたくない質問、例えば「内部被曝とはどういうことですか?」という質問に彼らはこう答えている。「放射性物質を体内に取り込んだ結果、体の内部から被曝することを指します。どういう元素であるかによって、体外に排出される速度が違います」。 前半はよいとして、後半は何が言いたいのだろう。できるだけ被曝の影響を小さく見せたい。そうかといって事実に反する回答もできない。そうしたジレンマがこのような意味不明な回答として現れている。概して彼らの質疑応答をみると「都合のよい質問に対しては聞かれてもいないことまで答える。都合の悪い質問に対しては聞かれたことに答えず、聞かれてもいないことに対して意味不明な回答で返す」というレトリックが一貫して施されている。なるほど、重松や長瀧のような連中を理事長に迎える組織だけのことはある。ごまかしとはぐらかしだけは超一流だ。 「良心的な学者は来ない」 敗戦後の1945年9月19日、占領軍当局はプレスコードと称する情報・報道管制に関する方針を発表。原爆に関する報道などはとりわけ厳しく統制された。外国の記者が広島・長崎へ入るのを4カ月間も禁止するとともに、マンハッタン計画の副責任者は「広島・長崎では死ぬべきものは死んでしまい、9月上旬において原爆放射能のため苦しんでいるものは皆無である」と発表した。その一方で米国にとっては原爆症の調査研究の続行がどうしても必要だった。これがABCC~放影研設立の経緯である。当時の広島市長などは反対したが、ABCCの建設工事は強行された。 そこでは、収集した数十万人の被爆者名簿から一定数が調査対象標本として抽出され、研究目的に従って該当する被爆者を呼びだして様々な検査を行い、集められたデータを解析する方法がとられた。やがて「調査研究の対象にはするが治療はしてくれない」ことが明らかになると被爆者によるABCC撤去運動も行われた。 「良心的な学者だとか、研究者だったら、放影研へは来ないですよ。だから、あの人がチェルノブイリの調査責任者に選ばれたのは、最初から、ある結論を出させるためだったのではないか、と私は思います」。広島被爆者団体連絡会議事務局長だった近藤幸四郎さん(故人)はこう語っていた。「あの人」とはもちろん重松のことだ。ABCCの原爆被害調査は、初めから「加害者が被害者を調査研究する」ものとして始まり、その後も続けられてきた(被爆40日後に広島入りし、被爆者の診療と病理解剖に当たった杉原芳夫博士の指摘)。そこに医者としての倫理など望むべくもない。 重松、長瀧、そして山下…。「治療はせずにデータだけ取る」人体実験主義者、戦後のすべての公害・薬害でことごとく被害者を切り捨て、政府・財界に奉仕してきた御用学者たちの師弟関係が日本の医療界を支配し歪めてきた。切り捨てられた被害者たちは、補償を勝ち取るためにその後の人生のほとんどを裁判闘争に費やさざるを得なかった。だが、4大公害裁判として知られる水俣病やイタイイタイ病を巡る訴訟では原告が勝訴、原爆症認定訴訟でも御用学者たちが否定しようとしてきた内部被曝との因果関係が認められ原告が勝訴した。歴史的に見れば政府・御用学者たちの策動は最後には粉砕され挫折してきた。歴史上最も新しい被曝地・フクシマでこれから何が起きるかは、こうした歴史上の事例を見れば明らかだ。被害者を切り捨て泣き寝入りさせるとともに、治療はせずデータだけ取る人体実験政策のための尖兵として山下俊一が送り込まれたことは、もはや説明するまでもないだろう。福島県は、県民全員に対して「健康調査」を実施する方針を明らかにしているが、筆者は調査票が配布されてもこれには協力しないと決めている。 「放射線医学総合研究所(放医研)でホールボディーカウンター(内部被曝を検査する器具)による検査を受けたが、大丈夫だとだけ告げられ数値のデータはもらえなかった」。飯舘村で活動していた男性からすでにこうした訴えも聞こえている。フクシマでも人体実験の策動が始まろうとしている。 だが私たちには強力な武器がある。敵は歴史に学ばないが私たちは学ぶことができるということだ。この国を覆い尽くした原子力ファシズムを突き破るフクシマの「母親民主主義」も展開され始めている。フクシマのヒバクシャたちは、おそらく広島・長崎のヒバクシャよりも短い期間で敵の策動を打ち破るだろう。 福島県では、山下らの放射線リスク管理アドバイザー解任を求める署名が集められた。県議会でも与党会派の議員が解任を要求して県当局を追及している。一貫して反原発の立場から著作活動を続けてきた広瀬隆さんらによる山下らの刑事告発(業務上過失致傷罪)も行われた。彼らには今すぐすべての公職から去ってもらわねばならない。 <参考文献・資料> インタビュー/長崎大医歯薬学総合研究科・山下俊一教授(長崎新聞)http //www.nagasaki-np.co.jp/news/daisinsai/2011/03/25103728.shtml 「ふくしま市政だより」(2011年4月21日号) 「100ミリ以下は安全」放射線アドバイザー山下俊一氏に苦言殺到(OurPlanet-TV)http //www.ourplanet-tv.org/?q=node/1037 山下俊一(長崎大教授)のトンデモ発言(日刊ゲンダイ)http //gendai.net/articles/view/syakai/130385 山下俊一は、福島県民は朝日ジャーナルなんか読まないと思ってるのかもしれない。あなたが飯館村で話してきたことと矛盾してますが…。http //twitpic.com/52aitv 飯舘村山下教授「洗脳の全容」(田中龍作ジャーナル)http //tanakaryusaku.jp/2011/05/0002408 本当に同じ人?! あるアドバイザー(医師)の発言と論文(武田邦彦さんのブログ)http //takedanet.com/2011/06/post_a564.html 「福島原発のリスクを軽視している」「安全説」山下教授に解任要求署名(J-CAST)http //www.j-cast.com/2011/06/14098424.html チェルノブイリから広島へ~重松逸造がどのようなことをしてきたか(磯野鱧男Blog)http //blog.goo.ne.jp/ryuzou42/d/20060904 ABCC(現放射性影響研究所)(広島の原爆遺跡と碑)http //www3.famille.ne.jp/~kodayo/genbaku/abcc.htm (黒鉄好・2011年7月18日) 放射能汚染とデマ汚染に抗す
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長崎大・山下俊一教授の『語録』 山下俊一氏・高村昇氏「放射線と私たちの健康との関係」講演 2011年3月21日 http //ameblo.jp/kaiken-matome/entry-10839525483.html 2011年3月21日14時- 山下俊一氏・高村昇氏「放射線と私たちの健康との関係」講演会(前半) 2011-03-24 00 41 13 Theme 講演 司会: それでは、私の方から本日ご講演を頂きますお二人の先生方をご紹介させて頂きます。 初めに山下先生でございますが、山下先生は長崎大学大学院医歯薬学科薬学総合研究科長をされておりまして、世界保健機構緊急被ばく医療協力研究センター長、日本甲状腺学会理事長をされています。 次に高村先生をご紹介します。高村先生は同じく長崎大学大学院医歯薬学総合研究科に勤務され、2010年1月から2010年9月まで世界保健機構テクニカルオフィサーを勤められておったと聞いております。現在、お二人は福島県民の安全・安心を図るため放射線による健康被害に関する世界的権威からアドバイスを頂いておりまして、放射線と健康に関する正しい知識を県民に提供することを目的とした福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに、去る23年3月19日付で就任・委嘱されているところでございます。本日は「福島原発事故の放射線健康リスクについて」と題しましてご講演を頂きます。それでは、山下先生、高村先生、よろしくお願いします。 高村昇: 長崎大学の高村でございます。今日はお忙しいところ、こんなにも沢山お集り頂いて本当にありがとうございます。そしてまた、今回の震災、福島県でも多くの方が被害に遭われ、またお亡くなりになられたと聞いております。心よりご冥福をお祈りしますとともに被災に遭われた方々にお見舞いを申し上げたいと思います。 私共、先程ご紹介ありましたように長崎大学から参っております。ご承知のように長崎、広島といいますのは、日本でたった2カ所、というより、世界でたった2カ所原爆が落とされた土地でございます。1945年に原爆を落とされて以来、我々長崎大学は被ばく者に向き合い、被ばく者の方のケアを行って参りました。その間、65年という長きにわたります。私自身も元々は内科医でございます。内科医としまして被ばく者の方の診療をし、あるいは被ばく者の方の健康リスクを解明するといった仕事やって参りました。そしてその一方、盛んに最近報道にありますチェルノブイリという言葉が出てきますね。私、実はかれこれもう、40回から50回でしょうか。チェルノブイリの方に足を運んでおります。そしてチェルノブイリの被災者の方に向き合いまして、その診断・治療を行う。あるいは、そういった方々を対象としたいろんな研究を行う。そういった活動をもう、かれこれ15年あまりやってきております。 そのように長崎大学では被ばく者、これは長崎の被ばく者に限りません。国際的な、世界的な被ばく者の健康のリスクといったものをずっと診断・治療あるいは研究してきたわけですけれども、今回、このような福島で、地震に伴う津波、これだけでも非常に大変な災害なわけですけれども、それに加えてこの原子力発電所の予想外の事故。そして、それに伴う放射能の漏出、そして放射線が至る所で観測されるという、この予想だにしなかった事態におそらく県民の皆さんは困られている、心配が非常に大きいんじゃないかなと思っておりました。それは、長崎からニュースで見てもそう思いましたし、おそらくマスコミの報道とか、あるいは新聞の報道とか、そういうのを見るたびにおそらく皆さん、不安感があるのではないかと大変心配しておりました。 その理由の1つとしましては、おそらく皆さん方は放射線ってそんなに身近にあるものではないと思います。おそらく、例えば胸のレントゲンを撮るとか、CTを撮るとか、そういった時には放射線のお世話になる訳ですけれども、それ以外にそんなに身近に放射線があるとは思っておりません。実はある訳ですけれども、思っておりませんから、なかなか馴染みがなかろうと。そういったところに、いきなりニュースで「これはチェルノブイリ級の事故である」とか言われれば、これは不安であろうなと。そう思いますと、我々は本当に居ても立ってもいられなくなりまして、これはやはり我々が行って、ちゃんと市民の皆さんに放射線、放射能についての説明をしなければいけないんじゃないかと思い立ちました。それで、福島県知事さん、あるいは福島県立医科大学の皆様の本当に大きな協力もあって、今回このような場を設けさせて頂く事になりました。 今日はまず私の方から、ごく簡単に放射線とはどういうものかというお話をします。そして、長崎あるいは広島で原爆が落ちた、そしてチェルノブイリの事故があった。それと今回はどういうふうに違うのか。結論から言えば全く異なるし、全く健康に対する心配はしなくていいんですけれども、それは何故かということ、どれくらい規模が違うのかというのを簡単にご説明申し上げます。その後、山下俊一教授の方から質問を受け付けるという形にしたいと考えております。 まず、皆様、先程申し上げましたように、放射線というのは一般の生活に関係があるとすれば、例えばX線を撮ります。最近よく胃の透視という話が出てきますね。あるいはCTを撮りますという時に放射線を使います。これは、どうやるかといいますと、身体の外から放射線を当てて、それを使って写真を撮ったりして診断に役立てるという事をする訳です。あるいは放射線は治療にも使います。例えば、ガンになった時に、そこに放射線を当てることによってガンを手術をすることなく治療するとか、そういったことにも使います。このように放射線は人の診断や治療といったものに役立つという事がある訳です。これを利益、英語でベネフィットと言ったりします。 その一方で、放射線はリスクも負っています。私が先程申しましたような、長崎・広島の原爆、これによって多くの方が被ばくされたわけです。それによって多くの方が亡くなられた訳ですし、例えば私が現在働いております長崎大学の医学部は、原爆が落ちた所から大体500メートルから600メートルくらいの所にありました。多くの学生さんやスタッフが亡くなりました。そういった原爆、いわゆる殺傷兵器としても放射線は使われた訳です。 その一方、原子力発電所というのがあります。原子力発電所は、普段は我々の役に立っている訳です。要するに電力を供給してくれるという、非常にベネフィット、役に立つ面がある。ところが、いったんこれが事故を起こすと、これが最も有名なもの、世界史上最悪の事故というのが、先程来出ているチェルノブイリの事故ということになるのです。 このチェルノブイリの事故は1986年に起こりましたけれども、チェルノブイリの4号炉の炉心が、最近、皆さんよくテレビ・新聞等でご覧になられている思いますけれども、炉心が完全に爆発して、そこから大量の放射能がまき散らされるという状態だった。それによって最近よく報道されているような、放射性ヨードであるとか、あるいはセシウム137といった、いわゆる放射性物質、放射能が放出された訳です。その中で特におそらく放射性ヨード、ヨウ素131という物質があるんですが、これが大量にまき散らされたことによって、多くの住民、特に子供さんが被ばくして、それによって甲状腺ガンが発症したというのが、チェルノブイリの事故な訳です。 そういった事実がベースにあるものですから、今回、例えばヨウ素131が出ました、セシウム137が出ました、毎日いろいろな所で今日はどのくらい、今日はどのくらいと報道されます。そうすると、これは危ないんじゃないか、これは福島でこのまま暮らして大丈夫なのか、と思われると思います。これはやむを得ない、仕方のない感情だと思います。しかしながら、先程、私は申し上げました。これによって、福島県民、あるいはもっと言えば日本国民といってもよいでしょう、その健康リスクはありませんと申し上げました。何故かと言いますと、これはひとえにその出た放射能の量、あるいはその放射能から出される放射線の量に起因します。 つまり、ある一定の量、具体的な線量は後からおそらく山下先生から説明があると思いますが、ある一定の線量は人間のためには害にならない、むしろベネフィットになる。例えば今言いましたような、X線を使うとか、胃の透視に使うとか、あるいはCTに使うとか、そういった量は、例えばもちろん、原爆の被ばくする量、原爆によって被ばくした量、あるいはそれよりも少なくなりますけれども、チェルノブイリで被ばくした線量に比べれば遥かに低い線量な訳です。そして、ニュースでよく説明がありますように、今回、例えばヨウ素131が1時間当たりに出ている量、あるいは1日当たりに出ている量、それも空気中にある量ですね、それは、そのCTであるとか胃の透視の検査よりもさらに少ない量であるとよく説明を受けられていると思います。ですから、それを考えると、明らかにチェルノブイリやあるいは長崎・広島の原子爆弾とは、今回の一連の福島第一原発の事故というのは全く性格の異なるものであろうということが言えます。 ただし、1つだけ皆さん方がもう1つ心配になってらっしゃることがあると思います。それは、こういうふうに少しずつでも漏れ出しているのが、いつまで続くんだろうということが恐らくあるんだろうと思います。確かに少しの量、ですから、これは決して原発の炉心全部が壊れて、そこから大量の放射能が出ているわけではなく、ごく一部の所から漏れ出して、それが風に乗ってやってきているという状況ではあります。しかし、それがダラダラダラダラと、長期、数日間、この一週間ですかね、続いているということが、これが皆さん不安なんだろうと思います。しかしながら、今日の特にデータなどを見る限りでは、少しずつやはり状況は改善してきているように思います。 ご承知のようにテレビでは必死に原子力発電所の消火作業に当たったり、冷却作業に当たったり、あるいは発電所の非常電源を繋いだりと、一生懸命働いている方が沢山いらっしゃるというのが連日報道されております。そういった状況もあって、少なくとも、例えば、ここからさらに大きな爆発があるといか、それを皆さん一番心配してらっしゃると思いますけれども、そういった状況になるとはちょっと考えにくいと思いますし。ですから、現時点では、そしてこの先も、この原子力発電所の事故による健康リスクというのは、非常に、と言ってはいけません、全く、考えられないと言ってよろしいかと思います。 ですので、これは質疑応答の中で各論でお話があると思いますけれども、大事なことは皆さん是非、情報をきちんと集められてください。そして、きちんと情報を集めて、それで冷静に判断して頂くという事が大切であろうと思います。恐らく、今日ここに来ていらっしゃる方の中には、福島市内だけでなく、いろんな所から避難されている方もいらっしゃるかと思います。ここ福島は原子力発電所から50キロくらいですかね、61キロですか。失礼致しました。61キロ離れているということですけれども、もっともっと近い所かた避難されている方もいらっしゃると思います。そういう方は恐らくもう一週間以上、避難生活がきておりますので、非常にストレスもあると思います。肉体的にもきついと思います。ですから、それにプラス、この放射線のこういった一連の報道、あるいは事故ということで、かなりストレスの溜まっている状態であると思います。大変であると思いますけれども、やはり冷静に、是非情報を集められて、冷静に対応して頂ければと思います。 そして同時に、今日は質疑応答をここで致します。終わった後も、先程申しましたように、私と山下教授は福島県の放射線健康リスクアドバイザーに就任致しました。是非、県を通じまして種々の媒体で質問頂ければ、それはわかりやすく説明しようと思いますし、今後もできるだけいろんな市町村を回りまして、説明会をしていきたいと思います。そういった場を通じて、情報を公開する、正しい放射線に関する知識を公開するよう努めて参りたいと思います。私たち長崎大学、あるいは長崎は福島の皆さんをこれからも継続して応援したい、支援したいと考えておりますので、是非よろしくお願いしたいと思います。これで私の説明を終わらせて頂きます。ありがとうございます。 山下俊一: 引き続きまして、少し年をとった山下が出て参りました。皆様方、今のお話を聞いて少しは放射線が何かということをご理解頂ければと思いますが、ここ福島にあって最も心配していることは、環境中の放射性レベル、あるいは土壌の汚染レベル、もっと言うと、野菜、あるいは水、いろんなレベルが安心、安全なのかどうかということだろうと思います。もちろん、火元である原発の事故が収束しない事には何ら将来の安全や安心をお話することはできません。 私たちが何故ここに来たかというと、専門家の話はよくわからん、あるいは数字が出てきたり単位が出てくると何にことかさっぱりわからん。どの情報を信用していいのかもわからん。わからんずくめ。わからんずくめで判断をして皆様方は行動をとったり、あるいは不安になったり、不信感を持ったり、避難して逃げて行くという、そういうふうな悪循環を是非断ちたいということで、広島・長崎の経験をいかすべくここに来ました。 皆様方は原発でいま作業されている方々の被ばくの量と、今ここに我々が居る被ばくの量が全然違うということは感覚的にわかりますよね。火元に近ければ近いほど熱線として熱を浴びる、火傷をします。これが今の現状です。火元から遠いと、火は当然熱線も届かないし、火の粉も降り注がない、もっと言うと、火山が爆発した。火山が爆発した近くに居ると、火砕流が流れてくる。大きな岩石が飛んでくる。火の雨も降る。危険。5キロ、10キロ、30キロ離れると火の粉は飛んで来ん。飛んで来たとしても灰になっとる。そのように考えていただけると、この事故の影響は、実は火元さえ抑えれば治まります。しかし、未曾有のこの大惨事で、残念な事に全く予期しないことが次々と起こってきました。 私も国の原子力安全委員会の一人のメンバーですけれども、毎年原発事故を想定して訓練をします。シナリオありきの訓練です。そのシナリオは10キロゾーンで避難ということで、10キロ内の避難を想定したシナリオでありました。でも皆さん、今回の事故はどうでしょうか、なんだか知らないうちに20キロ圏内が避難地域になってしまいました。実は訓練では、まず危ないということがわかると、屋内退避をします。環境中に放射性物質が出ると危ないから、屋内に避難しないさいという判断がなされます。それでも危ないということであれば、当然避難をする訳です。避難、すなわち安全なところへ逃げて行くというのが避難です。でも、今回は10キロの倍、20キロ避難したにもかかわらず、いま20~30キロの間は屋内退避というふうな言葉で、一般の住民は何の事かよくわからん。これは危険なのか、危険じゃないのか。しかも、マイクロシーベルトという値が出て来て、 0.02というバックグランドはいつの間にか1になって2になって、20になって、30になって、そんなふうにどんどん日ごとに何か悪くなっている。今度は福島市でも20マイクロシーベルト/hと言っているぞと。 これについて枝野官房長官も、あるいは政府も、出す声明は正しいんです。値は正しい。環境の汚染、あるいは物理学的なデータは原子力安全・保安院が出すデータは正しいんです。しかし、何が足りないか。じゃあこれが健康に危険かどうかをきちんと説明し得る、その説明の仕方が足りない。何故足りない。誰もこんなことを経験した事がないからです。想定外のこの事故に対して、専門家も自分の専門の分野のコメントを述べます。マスコミを通じてそうです。色んな人が色んな事を言うから、全く違うことに聞こえる方もあるかもしれません。私達はそういうことをイヤというほど過去の事例で経験してきました。 今は非常事態ですからご心配が多いけれども、いずれこれは治まって、安全宣言がされて、復興のいかづちを上げなくてはいけません。しかし、今はその渦中です。火の粉が降り注いでいるという渦中で、これをどう考えるかということを皆様方は念頭に置いてください。今その渦中にいる我々が予測をする、あるいは安心だ、安全だという事は、実は非常に勇気のいる事であります。危ない、危険だ、最悪のシナリオを考えるという事は、これは、実は誰でも出来るんです。しかし、今の現状を打破するためにどう考えるかという時に、今のデータを正直に読んで皆様に解釈してお伝えするというのが私たちの役割であります。 放射線の健康への影響は大きく2つ分かれます。高野先生がおっしゃった外部被ばく、外から放射線を浴びるというのを外部被ばくと言います。私たちが20年来仕事をしているチェルノブイリでは、内部被ばくといいます。規模は違いますが、その様相がよく似ています。だから、海外のメディアは心配をして、これは第二のチェルノブイリ型になる怖れがあるから、皆さん遠い所に避難しましょうと。自国の外国人の、東京のいわゆる入国を減らしたり、国外退去を勧告したりしている訳であります。これも、日本の情報が正しく海外に伝わっていないからであります。 一般の、私たち20キロ、30キロ離れた人たちの放射線の被ばくは何が問題かというと、内部被ばくであります。決して、ここにいる私たちは直接あの原発の放射線を受けません。これは明確です。20キロ、30キロに住んでいる方々は、あそこの熱線を感じることはありません。唯一、大気中に放散された放射性の物質が飛んで来てるんです。これを拡散といいます。風、あるいは温度、あるいは地形によって、その飛び方は違います。同心円的に3キロ、5キロ、10キロ、20キロ、30キロと言っていますが、これは全く意味がありません。いいですか。20キロだから安全、 30キロだから屋内退避、40キロだから安全と、そういうものではないんです。 しかし、どこかで線引きをしないといけない。その線引きは、安全だと言えるから線引きをする訳です。20キロを超えれば、放射性降下物が降り注いだとしても、少々汚染しても全く健康に影響がないから、20キロあるいは30キロ屋内退避という今、令が出されています。 しかし、残念なことに国もこれは困っています。何が困っているか。屋内退避というのは次は避難なんです。じゃあ30キロ以降まで避難させるかどうかという話になります。でも、この一週間その指令は全く出ません。これだけ原発がトラブルを起こして危ない、最悪のシナリオだといいながら、じゃあなぜ国は 20~30キロの人を避難させないんでしょうか。ここは知恵の絞りどころです。今の現状は危険じゃないからです。だから、避難させる必要がないのです。大気中の濃度は恐らく下がります。そして、食物中の汚染も、これは減ってなくなります。どうしてでしょうか。物質は安定なものと不安定なものから成ります。どのような元素も安定な元素と不安定な元素があります。不安定な元素は、不安定ということは安定になるために分裂をします。その時に放射線を出すんです。でも、安定に近づくから放射線は出なくなります。これを半減期といいます。どんどん放射線の活性は減っていきます。エネルギーが強いほど減っていきます。 大気圏中に出る今回の多くの放射性元素は、放射性ヨウ素であります。ヨウ素は半減期が8日間。8日間で半分になります。そしてその量も非常に少ないために、大気圏中にあるものが身体に入る確率は1/10です。放射性ヨウ素というのは甲状腺ホルモンの原料です。甲状腺に取り込まれます。ワカメや昆布に沢山入っているものと同じものです。その不安定な元素が実は原子炉から出ます。それを吸入して、少しは甲状腺が被ばくをするかもしれません。私が敢えて「少し」と言っているのは、今からお話をするチェルノブイリの事象と比較をするためです。 放射線は何故怖いかというと、エネルギーだからですよ。紫外線で火傷をする人もいますね。紫外線、みなさん一生懸命、女性の方は特にお化粧のメイキングや紫外線防護に気を遣われます。ただ単に日焼けであけではなくて、欧米ではこれが皮膚がんの原因になるからです。じゃあ、太陽でみんなガンになる?ならないですよ。放射線は紫外線と異なってエネルギーですから、身体に当たるとそれが細胞の遺伝子を壊すということで怖がります。だから、ガンの治療に使うということにもなります。 放射線はエネルギーとして、1つ覚えてください。1ミリシーベルトの放射線を浴びると皆様方の細胞の遺伝子の1個に傷が付きます。簡単!100ミリシーベルト浴びると100個傷が付きます。これもわかる。じゃあ、浴びた線量に応じて傷が増える。これもわかる、みんな一様に遺伝子に傷が付きます。しかし、我々は生きてます。生きてる細胞はその遺伝子の傷を治します。 いいですか。1ミリシーベルト浴びた。でも翌日は治ってる。これが人間の身体です。 100ミリシーベルト浴びた。99個うまく治した。でも、1個間違って治したかもしれない。この細胞が何十年も経って増えて来て、ガンの芽になるという事を怖がって、いま皆さんが議論している事を健康影響というふうに話をします。まさにこれは確率論です。事実は1ミリシーベルト浴びると1個の遺伝子に傷が付く、100ミリシーベルト浴びると100個付く。1回にですよ。じゃあ、今問題になっている10マイクロシーベルト、50マイクロシーベルトという値は、実は傷が付いたか付かないかわからん。付かんのです。ここがミソです。 にもかかわらず、新聞報道ではバックグラウンドの千倍とか、一万倍とかいう話が出ます。そのために、即それが健康影響を及ぼすというふうに誤解されます。書いてる新聞記者がよくわかっとらん。報道関係もよくわからないのに、我々専門家の意見をつまみ食いして記事を書きます。決して100%信用できるデータではない、コメントではないのですが、我々専門家も悪い。これを否定したり、あるいはきちんと反論して来ませんでした。 私が敢えて今回、このように皆様方の前に立って、専門家としてできるだけ分かりやすい話をしたいと思う理由は、国民がこの原発事故を通じて初めて、理科音痴が解消されるかなと期待しているからです。皆さん福島県民は原発がここにあるので、よく放射線の事をご存知で、放射能のことも知っているのかなと思ったけれども、何の事はない皆逃げ出している。出て行けと言ったら、皆出て行ってしまった。おかしいという疑問の手を挙げるためには理科音痴を日本国民全部、払拭する必要があります。特に新聞記者はそうです。報道関係は初めて今回、自分たちの科学的知識のなさに困惑しているはずです。付け焼き刃で記事を書いている。でも、これも大事なことです。勉強する、福島の原発事故は日本国民全員に理科を勉強するチャンスを与えました。シーベルト、何? ベクレルって、何じゃこりゃ?? そんなことから実は、私は是非皆様方にご理解頂きたいと思います。熱が上がったか上がらんかは手で触ればわかると言いますけれども、体温計が要るでしょう。いいです? 体重が太ったか太らんか、わからん。体重計が要るでしょう。数値化するということで放射線のレベルを知る事が出来ます。杉花粉がいっぱい飛んで来た。どんくらいあるかわからんぞ。測れんもん。見えん。でも、みんなアレルギーに、アトピーになる。これに対して放射線は測れるというのは、これは1つの武器なんです。いいです? ということは、測れるということは、その数値を政府が正しく出しても、それを理解する国民、我々が正しく理解できなければ何の事はない。全くの馬耳東風、猫に小判なんです。そういうふうにして、いま数値が一人歩きして、ピンポン球でメディアに踊らされています。これは由々しき状態。 ですから、私は皆様方にまず単位のことでご心配をしないようにお話をします。ミリシーベルトというのが、さっき言った1個細胞に傷が付く、100ミリシーベルトは 100個傷が付く。だから、いま原子力発電所の事故で決死の覚悟で働いている方々は、250ミリシーベルトに安全基準が引き上げられたのです。100ミリシーベルトが1回の、その時の作業時間の被ばくの線量が労働衛生上決められています。それを250というレベルで今彼らは仕事をしています。じゃあ、これで病気起こるの?ガンになるの?というと、そうではありません。このレベルをまず覚えてください。100ミリシーベルトとか250ミリシーベルト。我々日本人は年間約3.5ミリシーベルト被ばくしています。皆さん方全員そうです。私もそうです。ですから、年間数個の傷は放射線のせいです。でも、それ心配いらないんですよ。どうしてか。病気は、いいです?今この話はガンの話ですけれども、ガンは、色んな原因で起こるんです。放射線以外にたばこ、食生活、あるいは遺伝的な背景、環境因子、色んなもので起こります。100ミリシーベルト浴びると、100人、その生涯ずーっと調査すると、100人の内1人ガンが起こるかどうかという頻度です。100人が、平均78歳としましょうか、生きて1人ガンが起こるかどうかという、そういう確率論的な問題です。でも、70も 80も生きればⅠ/3はガンで死んどる。33人はガンで死んどるうちの、1人は放射線のせいかわからんという量の、100ミリシーベルトでみんな議論しています。 まず、そのレベルをご理解ください。こんな高いところで放射線の障害を議論している。でも、実際はその千分の1、マイクロシーベルトの環境中の問題。体内に入るともっと低い、そういう問題の中で皆さん不安がってます。何故、不安がるか。論理的にいま、私は数値で測れるという話をしました。何故怖がるか。音もしない、においもしない、わかんない。わかんないものに対する不安は、理性ではなく感性、感情で判断するんです。これが人間です。 私たちは科学の力で、この人類の発展と平和を築こうとしてきました。しかし、残念ながら原子力に関しては、原爆という兵器の開発が先行しました。そのために、原子力の平和利用という原発は常に負のイメージをもって推進されてきました。科学に善し悪しはありません。しかし、科学には善悪は判断できないとしても、事故は付き物です。科学の限界も当然あります。ヒューマンエラー、人のエラーも積み重なります。科学は単に原子力工学だけではありません。医学もそうです。あるいは経済学にしてもそうです。政治学もそうです。科学はありとあらゆる学問体系を含みます。その根幹は皆様方が持っている生き様、哲学です。そして、宗教学です。こういうものを全部含めたものが科学です。その科学が作り出した原子力発電所の過ちや事故を、じゃあ誰が清算し、誰が元に戻すことができるのでしょうか。それはやはり、科学の過ちは科学でしかコントロールすることはできません。これは人間の性です。人間の守備範囲である、自分たちが作り出した物に対しては自分たちで責任をとるという必要があります。 ミリシーベルトになったら、そのような生体、健康影響がありますが、マイクロシーベルトではありません。だから、私は大胆にも「心配いらん」というふうなことを断定し、バッシングされるかもしれませんが、皆様方に是非このナイーブ(?)から安心と安全を伝えたいということで、この講演会を企画しています。 昨日、いわき市に行ってきました。びっくりしました、いわき市に行ったら。途中、杉花粉がいっぱい飛んどる。これは原子力のありえんかなと思うくらい杉花粉だらけ。行ったら閑散として、福島市で見るようなガソリンスタンドの長い列がない。人がおらん。どうなっとるんだろうかと思って会場に入ると、ここ福島市民は、あるいはこの地区の、中通りと言うんでしょうか、は、みんな紳士淑女ですね。いわき市に入ったら、「おい、市長替えれ!」「替えるな!」とか、そんな罵声が飛ぶような所だったんです。これはまあ、どうして我々はつるし上げに来たのかと昨日いわき市で思いました。そうしたら、私の友人の鈴木先生が、「いや、これはもう、浜通りと中通りは人種が違うんだ」と言っておられましたので、少しは安心しましたが(笑)。 大切なことは、科学の目を持って新聞を読む。例えば、この福島市は20マイクロシーベルト/hというふうな値が暫く続いたそうです。しかし、今は10マイクロシーベルト以下になっています。20マイクロシーベルト/hというのは、1時間にずっとそこに居ると20マイクロシーベルト環境中にあり続けるという問題です。24倍すると1日約480マイクロシーベルトがそこにあります。しかし、屋内に居ると、約1/10の48マイクロシーベルトにしかなりません。1日の量は。身体の中に入っていくのは1 /10です。つまり1/100しか身体の中に入ってきません。いいです?すると、数マイクロシーベルト我々は1日に浴びるという計算になります。では、この浴びた内部被ばくはずっと蓄積するんでしょうか。せん。どうして?半減期があるからどんどん減って行く。放射線がここに付いてもずっとそこに残らないんです。だから、汚染という実は表現は、体表面に付いたという意味の汚染であって、ずっとペンキがそこではがれないというわけではありません。そこにたとえ付いて洗わなくても、実は半減期といって不安定な物質が安定に向かって減って行きます。じゃあ、そこにあればいつまでもその局所は被ばくするじゃないかと言いますが、圧倒的に量が少ないです。 今日は雨が降っているから、ひょっとしたら放射性物質が付いているかと思われるかもしれませんが、私は全然怖くありません。理由は、もう新しい爆発が来ていません。今ここにある放射性物質は、数日前の放射性物質がここに飛んで来て、それが落ちてここに溜まっとる。それだけの話です。だから、これからは色んな所に、盆地、あるいは農場、あるいは牧草地帯、野菜畑、土壌にそういうものが降り注いでいますから、そこを測ればけっこう高い値が出るはずです。じゃあ、それが即危険かというと、まさにいま私が話をしたように、たとえ口にしても、それは危険ではありません。問題はその量をずっと1年間食べ続けた時に、トータルとしてどのくらいになるから、安全基準に沿って、そうならないように制限をかけたというのが暫定的な基準です。 いいです? 安全な値を決める時に、トータル1年間どのくらい浴びたかということで安全基準を決めますが、これは1回それだけ浴びたということと換算、同じ状態と仮定して安全基準を作っています。微量を長期間受けるということを、1回に沢山受けて沢山細胞に傷が付いているのと同じ割合として安全基準を設けています。ここが一番、放射線の健康影響の重要な点です。放射線は入ったらずっと残っとる。大間違い。半減期があって消えて行く、洗い流される。拡散する。なぜそれが普通の日常の出来事かというと、物質は不安定なものから安定なものに変わる。その時に出す放射線の力は、だから半減期と共になくなっていきます。 今、日本で一番理科の知識が高いのは、ここ福島市の皆さん方です。こんなことを話をされて首を振って、もっとわかったような感じでいらっしゃいますけれども、なーんもわかっとらん、だいたい。それでいいんです。そんな、何でもかんでもわかったら我々の商売上がったりですよね。こんな話を一度でわかると皆さんはもう大学院卒業、単位をやります。わからんでいいんです。 唯一お願いしたいのは、皆さんと我々、あるいは皆さんと県、あるいは国の信頼関係の絆をつくるということです。今、何を信用していいのかと。今、皆さん方が最も信頼できるデータは何かということです。これは、好むと好まざるとに関わらず我々は日本国民です。日本で戦争で敗れ、そして原子力産業を支え、今の復興を成し遂げたこの日本において、我々が少なくとも民主主義国家として信じなくてはいけないのは、国の方針であり、国から出る情報です。これをきちんとオーディット、監査して、正しいのか正しくないかを説明する、実は機関が我が国にはありません。中立的に国の出す情報を正しいか正しくないかということを評価する機関がないんです。一方的な国寄り、一方的な反対、一方的な、即ち、そこに恣意が入ったり利益誘導の考え方が入るがために、国民は何となく不信、あるいは不安、疑いの目を向ける訳です。お墨付きがいるんですよ。水戸黄門が印籠を出すように、これは大丈夫だと。そういうふうな関係を、この福島原発を契機に日本はつくり直す必要があります。残念なことにJCOの事故でも、チェルノブイリの事故でも、それがなされて来ませんでした。 これから福島という名前は世界中に知れ渡ります。福島、福島、福島、何でも福島。これは凄いですよ。もう、広島・長崎は負けた。福島の名前の方が世界に冠たる響きを持ちます。ピンチはチャンス。最大のチャンスです。何もしないのに福島、有名になっちゃったぞ。これを使わん手はない。何に使う。復興です、まず。震災、津波で亡くなられた方々。本当に心からお悔やみを申し上げますし、この方々に対する対応と同時に、一早く原子力災害から復興する必要があります。国の根幹をなすエネルギー政策の原子力がどうなるか、私にはわかりません。しかし、健康影響は微々たるものだと言えます。唯一、いま決死の覚悟で働いている方々の被ばく線量、これを注意深く保障していく必要があります。ただ、一般の住民に対する不安はありません。 しかしながら、それでも不安はある。誰に不安がある?女性、妊婦、乳幼児です。次の世代を背負う子供達に対し、私たちは責任があります。だから、全ての放射線安全防護基準は、赤ちゃんの被ばく線量を基準につくられています。いいですか。子供を守るために安定ヨウ素材の投与、あるいは避難・退避ということの基準は作られています。大人は二十歳を過ぎると放射線の感受性は殆どありません。もう限りなくゼロです。大人は放射線に対して感受性が殆どないということをまず覚えてください。そのくせ、一番心配するのは大人。これは間違いです。特に男は大間違い。我が身を省みれば、自分はタバコを飲んだり、酒を飲んどるのに、放射線より遥かにリスクが高いのに。男はまず心配いらないです。守るべきは女性、女子供、妊婦、乳幼児です。もし、この状態が悪くなるとすれば、逃げるのは妊婦と子供でいいんです。男は戦わなくちゃ。復興に向けてここで福島県民として、会津の白虎隊でしう。それくらいの覚悟はあって然るべきです。 放射線の影響は、実はニコニコ笑ってる人には来ません。クヨクヨしてる人に来ます。これは明確な動物実験でわかっています。酒飲みの方が幸か不幸か、放射線の影響少ないんですね。決して飲めということではありませんよ。笑いが皆様方の放射線恐怖症を取り除きます。でも、その笑いを学問的に、科学的に説明しうるだけの情報の提供がいま非常に少ないんです。是非、今の私の話を聞いて、疑問が沢山あると思いますから沢山質問してください。これは講演会でも講義でもないんです。皆様と私のキャッチボールなんですね 山下俊一氏・高村昇氏「放射線と私たちの健康との関係」質疑応答 2011年3月21日 長崎大・山下俊一教授の『語録』